第586話 獣人とマスク

出来上がったマスクに付与を施し完成しました。


さてこのマスクが役立つ時があるのか疑問ですが、できるならこれをかぶらないで済ませたいです。


そして用があって居合わせたエレケにかぶってもらいましたが・・・・


「旦那様、これ獣人には駄目だよ?」


とダメ出しが。

「ええと具体的には何が駄目なんだい?」


「ええと、まず耳ね。耳が痛いの。」


ああ、いくらサイズが調整できると言ってもそもそも獣人の耳の位置には何の工夫もないんだよね。


そもそも獣人に装着してもらう前提がこれっぽっちもないから仕方ないんだけど。


「まずって事はまだ何かあるんだね?」

「ええ。次も耳。耳が聞こえずらいの。」


完全フルフェイスですっぽりかぶるやつだから仕方ないっちゃあ仕方ない。

「もしかして音がこもったりする?」


「うーんと、どうなのかな?変に聞こえて音の方向がわからないのね。」


獣人は音の聞こえる方向まで把握しているの?

そうは言っても僕らもある程度の音の方向は分かる・・・・はずなので、それがもっと鋭いのでしょう。


「あとは臭い。このマスクのせいで臭いがわからない。」


今回は何が起こるか分からないので、フィルターを強力にしています。

臭いの分子すら通らない。


行き過ぎの気がしますが、もしも臭いの分子より小さい細菌などが現れたら対処のしようがないので、一応そうなる前にフィルターで。


でもそうだよね。臭いがわからなければ獣人には色々な事が厳しいかも。


「ありがとうエレケ。獣人には厳しい装備だね。これを使わないで済むような方向で何とかするよ。」


「ありがと。でもね、獣人って丈夫だし人よりポンポン生まれるから多少死んでもいいよ。」


いやそれはおかしい。

多少死んでもって。


「特に子供を既に残した獣人はいつ死んでも問題ないから、好きに使ってね。」

・・・・今まで気が付かなかったけれど、これは獣人全てに対する生死感なんだろうか?

それともエレケだけ?


もし前者なら今後の獣人への対応を考え直さないといけないね。


死んでもいいからと無謀な突撃を行って、結果死に瀕してしまって救助しようにも死そのものを受け入れてしまっていたり。


まあ今回は獣人はやめておこう。

ただ魔大陸の生態によっては獣人の活躍があるかもしれないのでその時はその時か。


あ、そもそもエレケは何でここに?


「私の子供ももう巣立ったので、そろそろ無理な使い方をしてもいいよ?」


「ちょっとまって。それどういう意味?」


「うーん、どうって言われても?何だったらもっと子供を産む?まだまだ産めるよ?」


獣人の成長は人より早いようで、エレケの最初の子供はもう冒険に出て行っています。

複雑なんだけど。

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