第567話 ケルベロスのお使い
まさかと思うけど、僕がこの娘さんの口の中の歯と思われる部位を切除し、その一部がどうやら異物だったので収納かばんに仕舞ったのですが、数百年前にその異物によって精神を支配され、ずっと記憶がなかった?
これはちょっとどころの話ではないです。
一度両親に話を聞いておかないと。
だけど何処のまま娘さんを両親に引き渡すのは色々と問題がありそう。
なのでケルベロスに頼んでハーデースとペルセポネーをこちらに連れてきて話を聞くしかなさそう。
なので門番のケルベロスに連れてきてもらおうと。
「今から貴女の両親にこちらに来てもらいます。ですが僕では冥府に向かえませんので、ケルベロスに頼もうと思います。」
「まあ、ケルちゃんのお使いですのね?」
お使い・・・・そうかもしれない。
「一応手紙を持たせようと思っています。手紙、書けますか?」
この世界では字を書けない人が多くいて、貴族や富裕層でも識字率は怪しく、それ故字を書く事の出来る人も限られているようです。
「ええ、もちろん書けますわ。父と母に手紙を認めれば宜しいのね?」
そうなんだけど、大丈夫かな?
あの夫妻、自分の娘が数百年引きこもっていると言っていたうえに、今回は世話ができないと手紙を共に娘自体をこちらに送り込んできたんです。
今目の前の彼女を見る限り、普通に話しているようですし、引きこもりには見えません。
そうは言っても彼女は人間ではなく、ええと魔族でいいのかな?
魔族と人間の生活の違いがわからない上に、僕の妻で一緒に生活しているのは基本人間です。
獣人の妻であるエレケは殆ど一緒には暮らしていませんし、オイヴィは少しエルフの血が入っているらしいですが、こちらの世界の人間との暮らしの違いが分かりません。
あと秘書さんや侍女さんも今の所僕の周りには人間しかいません。
唯一接した純然たるエルフはロンドロッグからやってきたバイエンス氏の妻。
無論人妻なので手出しはしていません。
それにほとんど会話らしい会話もしていないので生活習慣は全く分かりません。
なので今更色々考えても仕方ないので、手紙と共にケルベロスに託す事にしました。
以前あの夫妻がこちらを訪ねてきた時に何か連絡手段を構築しておけばよかったかもなのですが、ぶっちゃけもう関わる事もないと考えていたので、そう言った手段はありません。
唯一考えられるのがケルベロス。
僕は娘さんに手紙を書いてもらい、またこちらも手紙を用意し託しました。
あ、娘さんもついてくるようで、ケルベロスに色々言い聞かせています。
「あら?何だか私の知っているケルちゃんより立派に見えますね?ケルちゃん?お使い頼めるかしら?」
「くうぅぅん」
とかその図体に似合わない可愛らしい鳴き声で答えるケルベロス。
仔犬かよ!と突っ込みたくなります。
もし茂みの中であの鳴き声を聞いたら、そこに仔犬がいると勘違いしそうです。
「じゃあお願いね?」
首に手紙の入ったカバンを括り付け、夫妻に渡してもらうように僕からも頼みます。
やはりその図体から似合わない可愛らしい鳴き声で答え、去っていきました。
さて、上手く連絡が付くのでしょうか?
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