第566話 冥府の王の娘

娘さんは気が付いたはいいものの、ここが何処か分かっていない様子。


さて、何処まで覚えているのかわからないけれど、まずは彼女の知りたい事をを教えましょうか。


「ここは常山領ですよ、お嬢さん。」


「常山領?それは何でしょう?私存じませんわ。」


あ、もしかして引きこもりだったから知らない?


「ええとですね、ケルベロスが守る門を知っていますか?」


「ケルベロス?ケルちゃんの事でしょうか?もしあなたが言うケルベロスがケルちゃんであれば、あの子は冥府の門を守っている?いえいえ、あそこで飼育しているだけですから違うのかしら?でも・・・・」


「たぶん貴女の言っている場所で合っていますね。」


「そうですか?ではその門が何か?」


「その門付近にはダンジョンがあり、この街はそのダンジョンの近くにあるのですよ。つまり貴女の知る門の近く、という訳です。」


「ああ成程そうでしたか、これはご丁寧に。では私何故この街でいいのかしら?人族の住まうこの街に居るのでしょうか?」


「ケルベロスが貴女をここに運んできたのですが、覚えていませんか?」


「ケルちゃんがですか?無理でしょう?あんな小さな子が私を運ぶなど、できるはずもありませんもの。」


うーん、やはり記憶が。


「ではこちらからも聞きますがいいですか?」


「ええどうぞ?」


「今目覚めて此処は何処と尋ねましたよね?ではそれ以前に居たのは何処でしょうか?つまり先ほど目覚める前はどうしていたのか、何処にいたのか、わかる範囲で教えていただければ、と思うのですが。」


「うえ?これは失礼ですね。私いつものように自室で寝ていたのですわ。そして朝目覚めてみれば見知らぬ場所で寝ていたのです。」


「自室ですか?冥府の王の住まう城の一室ですか?」


「冥府の王?何ですのそれ?」

「貴女の父上の事ですよ、ええとハーデースと名乗っていたと思うのですが。」


「父は冥府の王ではありませんわ。単なる魔王の部下?いえ部下でもありませんね。使用人でしょうか。」


・・・・どういう事でしょうか?

「では母君の事は覚えていますか?確かペルセポネーと名乗っていたと思うのですが。」


「ええ、母の名は合っていますわ。」


「ではもう一つ、失礼ですが貴女の年齢はおいくつでしょうか?」


「私の年齢ですか?父上と母上をご存知ならばお分かりと思うのですが、つい1週間ほど前に17歳になったばかりですの。」


17歳?そんなバカな!数百年引きこもりだったのじゃ?

確かそう聞いたんだけど。

聞き間違え?それとももしかして17歳の時に捕らえられ、数百年操られていたとか?


見た目は確かにまだ10代の少女のそれなんだけど。

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