第400話 煽り
しかし疑問に思うのはこの目の前の人物、本当に魔王に後れをとる事がないほどの実力の持ち主なのでしょうか。
本人に面と向かってそんな事聞けませんし、もし聞いて逆鱗に触れて怒らせても面倒ですし、恐らく僕が魔王を退けたという情報を知っていると思うので、下手をすればあんたの実力を確認したいとか愚弄する気か、とか難癖付けて僕と戦いたいとか言いそうだから、できればそんな事は避けたいんだけど。
だけどそんな僕の考えをあざけるかのようにクサンデル氏の妹、ヨランデ女史が言い放ったその言葉に僕は絶句してしまいます。
「ふーん。まああの団長さんって、有力者だから団長だったのであって、単純な武力ではお兄ちゃんに到底及ばなかったんだよね。そこの公爵さんもお兄ちゃんと打ち合えばわかるけど、強いよ?」
何煽ってるのこの女性。
「おお!それはいいな。公爵殿は魔王を退けるほどの実力者と聞き及んでいますし、もしその公爵殿を私が打ち破ればそれ即ち私はやはり魔王より強い、という事がわかりますからな。さあ今すぐ撃ち合いましょう!」
いえ、何言ってるんですか。それに撃ち合うって打ち合うじゃなく撃ち合うんですか?武器でやりあうのではなく魔法ですか?
「魔法と武力、どちらでも構いませんよ。どちらがよろしいでしょうか!」
ちょっとおかしい!何故にどちらがよろしいとかになってるんですか!
そんな無駄な事しませんから!
「クサンデル殿、皇女様の行方を確かめに来たのではないのですか?」
オイヴィが助け舟を出してくれます。
「オイヴィ、確かにそうだ。だが純粋に目の前の公爵殿と私のどちらが強いか確かめたいのだよ。」
「そうは言っても話にならない。」
オイヴィ、君まで何を言ってるんだ!煽ってどうする。
「オイヴィ、流石に今のは聞き捨てならない。それはどういう意味だ?」
「順平殿は今はその実力をある理由から封印している。しかしその本来の実力を全部出し切れば、貴方では相手にならないと断言できる。」
「オイヴィ、幾らなんでも言いすぎだ。それにどちらが強いとか、僕には関係ない事だし、関心もない。勝負はしないから煽らないでほしい。」
「単純に事実を述べただけだ。」
そのオイヴィの言葉がとどめを刺したのか、クサンデル氏は僕に剣を抜き、
「
それはそれは余裕な事だな公爵殿。是非ともその腕前を披露していただきたいものですな。」
なんでこうなるの。
「そんな事をしている余裕があれば、皇女様の行方を確認する事に注力したほうがいいと思いますよ。どうやらこれ以上の話し合いは無駄なようなので、僕は失礼しますよ。」
僕はあきれ果てて、帰る事にします。
「待て!勝負しろ!」
この人脳筋なのでしょうか。
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