第356話 ダンジョン探査の中止

この後先に戻り始めていたメンバーと合流し、全員がダンジョンを脱出します。

あの状況下では、何の備えもなければ全滅するのが目に見えていましたので、全員反対する事なく戻ります。

何せ今回の目的はダンジョンの調査であって、攻略ではありません。

しかもただ調査をすればいいというものではなく、密かに侍女さん達の監視の下、今回挑んだ冒険者がどのような行動をとるのか、そこに重点が置かれているわけで、侍女さんはそう言った所を見ています。


そして僕は密かに戻り、近くに居る侍女さんを呼び出します。

「どうされましたか?」

「全員撤退したはずなので、皆さんも一度ダンジョンから出て下さい。恐らくダンジョンの調査は中止になると思います。」

「かしこまりました。直ちに連絡をいたします。」


ダンジョンに入っている侍女さんは全員、連絡を取る魔道具を所持しています。

万が一侍女さんに何かあると困るので、無事かどうかを定期的にお互い連絡を取り合っているようです。

「全員今から撤退を開始しますが、調査隊の後にいたします。」

「それは任せますが、無理はしないようにね。最悪ゲートを使っていいから。」

「万が一の場合は使わせていただきます。お気遣い感謝いたします。」

「これ以上は怪しまれるから、僕も戻ります。」


僕も脱出メンバーに合流し、その後は何事もなくダンジョンの外に出る事が出来ました。


・・・・

・・・

・・


この後全員がユハニに報告をするという事で、いったん僕達はここで別れます。


別れ際、全員が、

「助けていただきありがとうございます!」


と、お礼を言われました。

まあ、死人が出なかったからいいんだけどね。

「これからユハニに報告でしょ?ありのまま言えばいいと思うから。」

「そう致します。」


今回の調査メンバーは全員ユハニの所へ向かったようです。


「今のは流石にまずいな。」

オイヴィが険しい顔でそう指摘をしてきますが、何?

「ユハニと呼び捨てにしただろう?この領地であ奴を呼び捨てにしていいのは、ここの領主だけだ。」


あ、そうだった。ついうっかり。まあそこまで気が付かないよね?


そう思ったのですが、オイヴィが盛大な溜息を。


「家臣になりたいと思い、ここに集まっておるのだ。今ので気が付かぬようでは逆に家臣にせぬほうが良いな。あの者らは全員B級以上の冒険者だ。ああいった事には敏感なはずだ。そうでなければB級以上は務まらぬ。」


そういうものなのでしょうか?


「順平さん、なんだか疲れたので、お風呂で疲れを癒しに行かない?」

友郁が気を利かせてくれたのか、そんな提案を。

「あ、いいなそれ。ユハニへの報告は時間がかかるだろうし、その間に入っておくのもいいね!」

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