第355話 撤退

目視できる範囲の魔物は全て仕留めてしまったので、冒険者の方々に声を掛けます。

「魔物は引き続き僕達で対応しますので、今のうちに救助をお願いします。」


「君達はいったい何者なんだ?この場にいたパーティはすべてB級以上だ。僕のパーティはA級パーティなんだ。それなのに逃げるしかなかったというのに、あの数の魔物をいとも簡単に仕留められるって、もしかしてS級パーティなのかい?」


あれ?そう言えば僕らってどうなってるのかな?気にした事がないので知らなかったりするんですよね。

そもそも領地の事があるから冒険者としての活動はほとんどできないし。ヘルトラウダもその辺りの事は何も言ってなかったし。


それよりも早く救助をしてもらわないと。

「早く!また出現するかもなので、なるべく素早くお願いします!」


「わ、わかった!みんな、警戒しつつ、向こうまで行くぞ!」


「わかった!」


「急ごう!」


「すげえ!!」


そして残ったのは僕達だけ。

あ、せっかくなのでドロップアイテムを確保しておきましょうか。

そう思っていましたが、オイヴィ以外は皆回収しています。

どうやらオイヴィが見張りで、他のメンバーが回収作業をしているようです。


ここで戦闘をしていた冒険者も、ドロップアイテムを回収できてなかったようですし、ついでに全部拾っておいて、後で分配しましょうか。


暫くすると、友郁と泉が戻ってきます。

そうそう、僕もオイヴィと共に周囲の警戒をしてるんです。


柚奈と瑞華はまだ拾っているようです。


「収納カバンがあると本当に便利ね!」

友郁は嬉しそうにカバンを持ちつつ、話しかけてくれます。

「重量を感じないし、大きさもあり得ないほどの大きさも入っちゃうし、自分で作っといて言うのもおかしな話だけど、どうなってるんだろうね。」

「見落としがなければほぼ回収できたと思いますが、救助に向かった方々、遅くないかしら?」

泉が心配そうにしています。

「じゃあ3人で様子を見に行こう。オイヴィと柚奈、瑞華は周囲の警戒をお願い。」

「わかった。また先ほどの魔物の大群が現れると、救助した面々には負担が大きかろう。湧けば仕留めておく。」

オイヴィの頼もしい発言を信じて、3人で先ほどのパーティが向かった先に進みます。


暫くすると階段が見つかり、下った先に先ほどの冒険者のパーティが居ました。

ですが様子が変です。

「急がないとまた魔物がわきますよ!」

そう言ったものの、一向に動く気配がありません。

「すまないが、一人は腰の骨を折る怪我を負っていて、自力で歩けないんだ。他の2人も何とかここまでたどり着いたようだが、歩けそうにないらしい。」


え?ポーションはないの?

あらかじめ多めの準備をしてあったと思うんだけど。


「ああ、言いたい事はわかるが、もう回復手段はないんだ。既に使い切ってしまった。」


ああ、そういう事ですか。

「わかりました。ちょっと待って下さい。」


僕は回復魔法のうち、範囲魔法を使い怪我人を回復していきます。


「え?君、回復魔法が使えるのか!信じられん。」


え?もしかして誰も使えなかった?志願者だから一人ぐらい使い手がいると思ったのに。


暫くして全員起き上がれるようになったので、自力で歩いてもらいます。

「あの、僕の回復魔法は万能じゃないですから、見た目怪我が治ったように見えても失った血は戻りませんから、無理はしないで下さい。」


「いや、その感謝する。メンバーの一人が腰の骨を折ってしまったので、何とかここまで逃げてきたのだが、あの魔物の量だ。我々には突破するだけの能力がなくてな。」


冒険者のリーダがそう言ってますが、腰の骨を折った人を運ぶのは、かなり厳しいはず。確かにあの場に逃げ込めただけでも運が良かったのでしょう。


なので此処に逃げて、ある意味正解なんですけどね。


「まあ今は話はあとです。この場を脱出しましょう。」


この場にいる全員は、可能な限り急いで出発します。


先ほど魔物がわいていた場所に向かいますが、魔物は新たに出現していなかったようで、そのまま戻ります。

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