第294話 新たな命に触れて

この後ザーラはアーダに連れていかれました。

去り際アーダが、

「王族の出産は、夫と言えども立ち入ってはならぬ!旦那さまの世界では夫が”立ち合い”という名の元に男も同席する事があるようじゃが、それは許さぬ。」


久しぶりにきつい顔で僕に言い放ち、消えてしまいました。


うーん、侍女さんの場合は良かったんだよ、並行世界ではそうだったし。

なのでこちらの世界でも普通に立ち会えるはず。そう思っていたんだけど。

なので何故王族は駄目なの?よく分かりません。


そしてある程度時間が経った後、アーダが呼びに来た。


そこには汗と涙でぐったり、顔色も悪いけれど、我が子を抱いているザーラがいます。

僕に気が付き目を開け、

「・・・・女の子。」

一言そう言ってまた目を閉じます。

僕はそっと近づきます。

その赤ちゃんは、動かなかったのでもしや?

と思ったけれど、単に寝ているだけの様子。


一応浄化で綺麗にしてから、先ずはザーラに触れます。

「よく頑張ったね・・・・」


どう声をかけていいか分からなかったので、そう言ってみる。

「頑張ったのはこの子。健康な赤ちゃんって言ってたの。」

そう言いつつ赤ちゃんを差し出してくれます。

う・・・・怖い・・・・ものすごく小さいんだよ。そう、片手で支える事ができるほどに。

日本で赤ちゃん抱っこした事ないから、どうしたらいいんだこれ?並行世界でも生まれたての赤ちゃんは抱かなかったんだよ、怖くて。。


そう思っているとアーダが赤ちゃんを手に取り、僕に抱かせてくれます。

「そうじゃ。怖がってはならぬ。怖がれば赤ちゃんに伝わるゆえ。」


僕は赤ちゃんを抱いた瞬間、全身に何とも言えぬ震えが走りました。

そしてそう、僕の中の何かがはじけ飛んでいった・・・・最後に残った異物感が消え去ります。


決して怖がってではない・・・・怖いけど。

だけどこの震えは・・・・歓喜に満ちた震え?それとも感動の震え?

どちらにせよ僕は赤ちゃんを、生まれたての赤ちゃんを今抱き続けるのは困難と感じ、アーダに返します。

そして、あれ?僕並行世界ではこんな小さな赤ちゃんを何度も抱きあげてたのに、何で今怖いのだろう??


そして助産師が割って入ります。

「まだ胎盤が残っていますので、胎盤を取り出します。その後はザーラさまは暫く安静にする必要がありますので、皆様退席願います。」


僕は、アーダと共に席を外し、別の部屋に向かいます。


そして、空いている部屋に入り、置いてあるベッドにアーダを座らせ、隣に僕も座ります。

何故ここにはベッドしかないのか?病室だから?とか思いながらも、ここしか腰掛けられそうな場所がないのでアーダも素直に従います。

僕はこの時色んな事があって落ち着きません。

そして横で心配そうに見つめてくるアーダの瞳。

何というか、その瞳に吸い寄せられるように僕は魅入ってしまいます。

気が付けば僕はアーダを押し倒していました。


・・・・

・・・

・・


アーダの体温が気持ちよく、やっと僕は落ち着きました。

「落ち着いたかの?」

「うんその、いきなり押し倒してしまった。」

「よいのじゃ。むしろこちらが押し倒したかったのじゃ。ザーラの子を見てしまったらの。我ももっと早う、我と旦那さまの子を欲してしまったのじゃ。」

う!そんな事を言われると押さえられないよ?

「ちなみにそろそろ排卵日なのだ。」


この後アーダに押し倒されてしまいます?

「まだまだイケるじゃろ?」

美女が野獣に・・・・


そして数刻後、侍女に起こされるまで寝ていました。あれ?

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