第293話 魔王の策略からの脱却

僕は再びザーラを見ます。

もう臨月なんじゃない?

そしてその、何故かおどおどしているザーラを見ていて・・・・何だか頭のもやもやが消えていきます。

僕は思わずザーラを抱きしめます。

勿論、お腹の子に何かあるといけないので優しく、そっと。

「じゅ・・・・順平さん・・・・私・・・・」

「何も言わなくていいよザーラ、よく頑張ったね、そして・・・・僕こそごめん、肝心な時に寝たきりで。」

「それはいいの、順平さんがこうして元気で居てくれるだけでいいの。」


【くそ!我の技に抗うか!】


何かが聞こえたような気がしますが無視します。

そして僕は再びお腹に触れます。

再び触れた瞬間、僕の中で何かがはじけるのを感じます。

それと同時に何かが発動した、そんな感覚。


【や・・・・やめろおお!!!】


何か聞こえますが・・・・何だか眩しくて目を瞑ってしまいます。


「順平殿・・・・いや、旦那さま、しっかりと自我を保てるか?」


アーダが何か気遣ってくれる言い方をしています。

どうやら僕は倒れそうになっていて、アーダが支えてくれた模様。


【くそ!失敗か・・・・覚えておれよ!】


どうやら先ほど聞こえた声は魔王だったようで、僕は魔王の影響から脱却したようです。


「ザーラ、アーダ・・・・ただいま。」

「お、おかえりなさい?」

「うん、迷惑かけたね。そして、僕は覚悟が決まったよ。」


僕は今まで色んな人に迷惑をかけて、そしてそれに甘えてしまっていました。

だけど今からは違う!


「才村殿!森江殿!」

アーダが去っていきます。


そしてすぐに、妻が集まってきます。

「皆ただいま。今まですまなかったね。どうしてあんな事になったかよく分からないけど、もう心配ないよ。」

「順平さん、元の順平さんなの?」


友郁がそう聞いてきます。

「うん、多分そうだと思う。」

すると柚奈が割って入ってくる。


「本当に順平なのだな?そうなら、今すぐ私を抱けるか?」

「ええと抱きしめたらいい?違う意味なら順番に、今夜からでどう?」

そういいつつ、柚奈を抱きしめてあげます。

「うう!我慢できない!」


「駄目だよ柚奈、あの子に会うんだろう?」

「う・・・・そうだった!」


「あ・・・・なんだかその・・・・痛いの。」


ザーラが突然そう言い始める。


「ど・・・・どうしたのだ?」

「お姉様・・・・わからないけれど、こう何だか・・・・お腹が・・・・痛い!」


え?どうしたの?


「も、もしかして陣痛?」

「え?産まれるの?」


皆慌て始めます。

何せ僕の事があったので、ザーラの事はまだ先だとそう思い込んでいた?

「ええと僕はその、わからないから、誰か知識のある人を!ああヘルトラウダ!君なら誰か呼んでこれるんじゃない?」


「ええ?私?ええと、助産師を呼んでくればいい?」

「いや待て、王族お抱えがいる!」


「それよりまずはザーラだ。落ち着く場所へ行こう?流石に今すぐは赤ちゃんは生まれないだろう?」


この場が一気に混乱してしまい、僕の事はうやむやになってしまいました。

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