第292話 15人と・・・・

こうした事が繰り返され、気が付けばさらに2週間、つまり15日が経過していたようです。

そう、そのたびに違う女性と同じ事を繰り返してしまっていたらしいです。らしいとは?記憶に残らないんです。

そして15人目の女性が

「私で最後です。ありがとうございます。」


そう言って去っていきます。


ええと確か16人いるはずなんです。僕はそう聞いてます。

まだ記憶が上手くつながらなくて。しかも最近の出来事を覚えている事が難しいのです。

実はこの記憶のあいまいさも魔王の仕業なのであるが、誰もそこまで気が付いていなかった。

魔王の真の恐ろしさは、その力の強さではなく、こうした魔法での策略なのである。

魔王の”魔”とは魔物を統べると思われがちなのだが、真の意味は魔を極めた存在なのだ。

そしてさらにこの魔王、相当力があるのだが、自身より強いと思われる相手には、こうした策を用いるのだ。


今まで魔王の行く手を遮る輩がおらず、誰も魔王が本当はこうした策略を用いるのが専門とは知らないのだった。


そして今、その順平なのだが・・・・


15人。あと一人は?

最後に付き従ってくれた侍女さんは、私で最後と言っていた。

1人はどうしたのかな?

もうつきあいきれないと、僕を見捨てた、若しくは別の人生を歩み始めた?


しかしそうではなかった・・・・


僕はそんな事を考えていたのですが、ここにその外人さん?

なんというか同じ人間?

そう思うほどの美貌の、しかも恐らく僕と同年代の女性。

確かアーダと名乗っていたかな?

アーダさんがやってきます。


「順平殿、ザーラに会ってはくれないか?」


はて、ザーラさんとは?

「ええと、アーダさん、そのザーラさんとは誰でしょう?」

「うむ・・・・我が妹なのじゃが・・・・やはり皆の事を思い出せぬか?」


「そのごめんなさい。何かこう頭にもやもやっとした何かがあるのですがどうにも思い出せないんです。」


彼女はこの国のお姫様らしいので、僕は敬語を使って話しています。

「そのように畏まった言葉は不要じゃ。寂しいではないか。ザーラにはもっと親しみを込めて話してはくれぬか?」

「ええと・・・・善処します。」

「頼んだぞ?では今から連れてくる故少々待っておくれ。」


そう言って暫くすると、1人の女性を伴ってやってきます。


アーダさんの妹さん?そう言ってましたよね、確か。うん、顔はとても似ています。

やはり妖精みたいなその美貌。

ですが僕はその、ザーラさんのお腹に目が行ってしまいました。


「順平さん・・・・私だけ妊娠してしまったの・・・・ごめんなさい・・・・」

僕はそう聞いた瞬間、全身に電気が走ったかのような感覚がおこります。

そして、こう、何というか頭のもやもやが・・・・変化しているような。

「う・・・・うう・・・・」

暫くして、何かが、目の前に何かがあり、それが霧散していくような?


・・・・

・・・

・・


あれ・何をしてたんだっけ?

あ、ザーラがいる・・・・ずいぶんお腹が大きい・・・・まさか?

「ザーラ!その・・・・もしかして妊娠している?」

「あ・・・・ごめんなさい!私だけって・・・・」

僕はザーラの手を取り、そしてそっとお腹に耳を当てます。


「・・・・僕とザーラの子・・・・そうか・・・・その、ありがとう・・・・そして・・・・」

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