第247話 従魔’S

常山順平は知らなかった!

そう、知らなかったんや!

え?何の事?


それは・・・・話を少し遡る事になるのだが、

場面は丁度ザーラがドラゴンの尻尾で弾き飛ばされた時の事になる。


順平は、まだ生きているドラゴンの頭が、ザーラの近くに倒れていたのを邪魔に思い、無造作に頭を掴み、邪魔にならないよう動かしただけのつもりだったのだが、この時ザーラは瀕死の状態で、順平は平常心ではなく、無意識にドラゴンをテイムしていたのだ。


因みにこのドラゴン、山を住処に、この界隈を縄張りとし、ダンジョンの異変によって大量のダンジョン産ドラゴンが現れた事から、様子を見に平原に降りてきたのだった。

そして全体を見渡すのに丁度よさそうな小高い丘に降り立ち、運悪く同じ場所を目指していたザーラが鉢合わせしてしまう事となる。


一方のドラゴンは、自分の進行方向とは逆方向からやって来たザーラに気が付かないまま地上に降り立ち、たまたましっぽが中途半端な位置になったので、ちょうどいい位置に戻した時、ドラゴンの後ろにいたザーラに当たってしまったという、ザーラにとっては不運としか言いようのない出来事となってしまう。


そしてその直後、何やら魔法が飛んできて・・・・人の魔法なぞ基本効かないこのドラゴン。

余裕で弾くと思いきや、その魔法の鋭さ、密度、威力が想定外すぎて、その魔法が尋常ならざる威力に気が付いた時には時すでに遅く、ドラゴンは避ける事も出来ないまま真っ二つになっていた。

ただ、何とか急所は外そうと、ほんの少しだけそらす事が出来たがようだが、しかしながら、身動きもままならぬようになり、その場に倒れてしまう。


その直後にフェンリルに乗った人間がドラゴンの所までやってきて・・・・

ドラゴンは頭を鷲掴みにされ、

その手から大量の魔力が流れ込み、

一方的にテイムさせられたのだった。


【何たること。ドラゴンの長たるこの我がいとも容易くやられ、あまつさえテイムなどと言う拘束を受け入れる事になろうとは。】


このドラゴン、通常のドラゴンと違い、

長き時を生きてきた古代竜・・・・エンシェントドラゴン。


そしてこの後、1週間以上放置されるという屈辱を味わったのだった。


【なんだ其方、主にテイムされておるのを、主に知られておらぬのではないか?】

見かねたフェンリルがドラゴンの様子を見にやってきた。


【我は主の命令により、この場を動けんのだ・・・・しかもこちらの言葉が届いておらぬ様子。何とかならぬか?】

【残念だが、今は番と盛っておるゆえ、無理じゃな。その番の数も多いゆえ、数日辛抱する事だな。】


・・・・

・・・

・・


そして数日後、順平がやっと解放される。


【やっとつながったか、主よ、丘に行くのだ。】


【え?どうしたの?】

【主よ・・・・まさかと思うが、何か忘れて・・・・と言うか、知らぬのか?】

【ええと何の事?】

【まあ良い、門へ来い!】


え?何?


何かわからないけどフェンリルがそう言うのでちょっと様子を見に行ってみましょう。


【背に乗れ】


僕は言われたまま背に乗ると、気が付けば目の前にでかいドラゴンがいるではありませんか。


【おい連れてきたぞ!】


【すまぬな。】


【ねえこれ大丈夫なの?】

【問題ない。主がテイムしたのだが、その様子だとテイムした認識すらないのだな。】


【え?僕がドラゴンをテイムしたの?そんな覚えはないなあ?】


するとフェンリル以外の声がします。声と言うか念話だけど。

【主よ酷いではないか、我は主の命によりこの場を動けんのだ。】

【ええと・・・・え?僕何か命令した?】


【邪魔だから、退くように。そして退いたら動けぬようになったのだ。】

はあ・・・・?

【そんな命令した覚えがないけど?じゃあ、僕や人に危害を加えないなら自由にしていいよ?あ、僕がテイムしたのなら、僕が不利になるような事もしたら駄目だよ。】


【ふう!やっと動けるぞ。今後主の命に従うゆえ、いつでも呼ぶがよかろう。】


いやドラゴンを呼ぶとか、一体どういったシチュエーション?

いやその前に、誰かこんな大きなドラゴンが丘の上にずっといるんだから、せめて報告が欲しかったな?

【番と盛っておったゆえ、知らせる事がかなわなんだのだが。】

え?番と盛る?

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