第223話 Side ヘルトラウダ

私の名はヘルトラウダ。

ギルドの受付をしています。


本名をヘルトラウダ・ゾーイ・フェルヴェイといい、

父はフェルヴェイ侯爵です。

王都より少し離れた地を治めております。


そんな侯爵令嬢が何故ギルドの受付?


何故って、もちろん結婚相手を探すためですわ?

え?そんなの貴族同士で結婚すればいいじゃないかってよく言われますが。


私に近づく貴族のぼんくら共は!あ、お下品でしたわね。

まあ下心しかないのか、すぐに私と寝所を共にしようと。

ありていに言えば、体目的ですわね。


私はそんな貴族の結婚観に嫌気がさし、王都のギルドは貴族の娘が結婚相手を求めギルドの職員、受付になる事がよくあると聞き、私も・と。


そんなわけで受付になって早?年が経ちますが、これといった出会いもなく。

受付仲間の間では、運よく素敵な殿方に巡り合え、寿退社した方もたくさんおられ。

いつかは私も!と思いますがなかなか。


そんな感じで過ごしていましたが、気が付けばもう25手前。

思えばアーダ様が羨ましい!

私が受付になったのは15歳、アーダ様と同い年ですが。

アーダ様は公爵様とご結婚。


その後の事は分かりませんが、羨ましい!


そんな折、魔王が襲撃してくるとのうわさが。

近隣の国家は悉く滅ぼされ、いよいよ次はこの国が・と。

そして王族の無謀な勇者召喚。

アーダ様もお倒れになられたとか。


そんな中、召喚に巻き込まれたという2人のカップルがやってきました。

私はそう、この殿方にひとめぼれをしてしまいました!

歳も近そうですし。

聡明そうで、お連れの方に対する心配りも抜群で。

私は、この殿方と秘かに結ばれる事ができないか、色々思案いたしました。

そんな中、思いついたのが、お連れ様とまずは仲良くなる事。

幸い、講習と称して、お連れ様と親しくなる事に成功、その後うまくやっていけると思いましたが、親密になる前に、魔王が襲ってきました。

幸い・・・・彼の名は常山様・・・・彼が撃退して下さいましたが。


私は常山様との距離を詰められないまま・・・・


ですが好機が!

常山様に助けられたアーダ様の助力で、私にもチャンスがやってきたのです!

アーダ様も常山様を狙っているようで・・・・アーダ様が常山様と結婚した暁には、私もいろんな対応ができるとの事で、常山様と結ばれる許可を頂けました・・・・ですが、彼の周りには、あまりにも素敵な女性が多すぎます・・・・

既に数歩リードを許してしまっており、このリードを縮めるには、何か一発で逆転できる手を打たねばなりません。

ですがそんなうまい手があるはずもなく。


隙を見て常山様に抱きついたり、キスをしてもみましたが、これでは差が縮まりません。

すでに才村様と森江様は、常山様に抱いてもらったというではありませんか。

私も抱いてもらいたい!

ですが、このままでは・・・・


ですが本日、好機がやってまいりました。


常山様が失われたゲートを再現しようとしており、私の目の前で物を転送することに成功しています。

物で出来たのです。次は生命で、と。


ですがどうやって?

やはり人で試さないといけませんよね?

ここで私は決心します。

この魔法陣を模したゲートですが、今やっと物を成功させただけ。

ですが、これを私が使えば、ひょっとして差が縮まるのでは?

そう思った私は、相当危険なのを認識していましたが、実行に移す事に。


常山様にはうまい事、もう少し距離を取った場所から試しては、と。

しかも別の部屋から。

私は片方の布をもって、空いている部屋に向かいます。


そして、部屋に入り、床に布を敷きます。

もしこれで死んでしまうなら、私もそこまでの女だったのだと思うように。

これが成功すれば、常山様ももしかして?

そんな夢物語を信じて、私はゲートの中に足を踏み入れ、真ん中に立ちます。


そして、なんだか全身から力が抜けて、魔力が無くなっていくのを感じながら・・・・


気が付けば常山様に抱いてもらってました。残念ながら性的にではなく、介抱されている感じですが。


「ヘルトラウダさん!なんて無茶を!」

「つ・・・・つね・・ごふっ・・・・・」

「しゃべっちゃ駄目だ!」

「ごぼっ・・・・」

「ヘルトラウダ!」

何か顔に口に触れた気がしましたが、私は・・・・気を失いました。

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