第195話 覚醒

僕は急いで友郁の元へ向かいます。


門を出ると、丁度友郁がフェンリルの息子から降り立ったところでした。


そして何やら、多分森江さんかな?と話している様子。


だけど、何か慌てている?


周りを見て、目が合ったんだけど、


「じゅ、順平さん!」


何だか様子がおかしいです。


「森江さんが!謝って、ごめんなさいって一点張りで!あ《森江さん?今から向かいますから!気にしてませんから!覚悟してましたから!》」


僕にも聞こえててきます。


《ごめんなさい・・・・ごぶっ・・・・》


え?


え?


《ちょっと森江さん?》


《ごぼ・・・・》


《森江さん?今行きますから!》


僕は友郁を伴い走り出します。


何か嫌な予感がします。


・・・・

・・・

・・


宿に到着し、僕達を見た女将さんが驚いていますが、説明している時間はないので、無視して借りている部屋の中へ。


中に入ると、泉は居ないようです。

次に寝室に向かうと、そこには泉が床に倒れているのが見えます。


急いで泉を抱き抱えると、手にぬめっとした感触が。


そして泉の手には、血に染まったナイフがあります。


ああ、なんてこった!


そして駆け寄る友郁。


さっきまで、友郁と喋ってたじゃないか!

それが何で、わずかな時間でこんな事になってしまうんだ?


僕は冷たくなっていく泉を抱きかかえ、呆然としてしまいます。そして・・・・

回復魔法を使いますが、生き返らない。そんな!


そうだエリクサーだ!

だが、エリクサーを使っても、泉は生き返らない・

あ――――――――――――!!!!!


僕は声のある限り叫びました!!!!

どうして!


どうしてこうなったんだ!


今思うと、泉が友郁と僕が付き合っているのを知っていながら、僕と肌を重ねたのを気に病んでたようです。


そうだ、今思えば泉は悩んでいたはず。

僕がハーレムが嫌いだとか言って、中途半端な態度で接してしまっていた。気づくべきだったのに、気が付かないでいた、なんて駄目なんだ僕は。


そうだ、これは僕の弱い、そして彼女らの気持ちを汲んであげられなかった僕の心の小ささが招いた、つまりは僕が小心者だったからだ。

更に大きな声で、魂で叫ぶ!!!!!


そして、意図せぬ事ですが、その時が来たようです。

視界に何かがあるので、画面を見ると、


【スキル中毒耐性】を得ました。


と出ました。


それを見て僕は、何故かできると感じ力を解放していきます!

全身からほとばしるエネルギー。



ごめん泉・君を救ってあげられなかった。

弱い僕を許しておくれ。いや虫が良すぎるね。


そして僕は遂にスキル中毒から解放され【覚醒】する事に。




・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・・

・・・・・

・・・・

・・・

・・

・・

・・・

・・・・

・・・・・

・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・


「森江さん、頑張ったね、さあ、これをあげる。」


友郁がそう言って泉の口に何かを入れています。

何をしているんだろう?

もうエリクサーですら蘇生できないのに。


そう思っていたのですが、


「ゴボッ・・・・ゴホッゴホッ」


え?

何?


「う・・・・才村さん?」

「森江さん、貴女の言う通りだったわ。」

「そう。では、覚醒しましたのね?」

「ええ!でもよくこんな事思いつきましたね?」

「ふふ!順平さんは勘違いしていますが、未来視は順平さんだけのスキルではありませんからね?それに、並行世界もですわ?」

「ええ?しかしよく仮死する勇気が出ましたね?」

「だって、すぐに才村さんが駆けつけるの知っていましたから。」


僕はえ?何?どういう事?

と、僕の頭の判断が追い付かない事態に混乱していると、


「その、ごめんなさい。」


ついさっきまでごめんなさいを連発していた泉。


「その、泉は無事なんだな?」


「ええ。順平さんには申し訳ないと思ったのだけれど、順平さんがいち早くスキル中毒から回復し、しかもその・皆さんが平和に、仲良く暮らす未来視は、これだったのですよ?」


ごめん僕の貧弱な頭では今目の前で起こった出来事が理解できません。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る