第191話 Side 森江泉 その3
そんな彼は、私が困っている時に、急いでいるのにもかかわらず、助けていただいた事があります。
彼は取引先(クライアント)から急な呼び出しがあって、急いで社を出るのに、たまたま受付の私達の方を通ってこられたのですが、資料の関係で、このほうが早く出られるようで、私達の近くを通ったようです。
この時私は、眼鏡を修理に出していて、慣れないコンタクトをしていたのですが、目が痛くなって外した時、うっかり床に落としてしまったのです。
私が床に這いつくばって探している時でしたので、きっと彼は私の無様なお尻を見たのでしょう。恥ずかしいですわ。
そんな私を見かねて急いで戻ってきて下さったようで、
「あの、何か落としましたか?」
そう聞いてく出さったので、
「あの、コンタクトを落としたのです。」
「あ、いつも眼鏡かけてますもんね、可也視力悪いのですか?」
「ええ。眼鏡無しではその、この距離でも相手のお顔が分からないほどですの。」
既に手を伸ばせば触れる所にその人のお顔がありましたが、右眼ははっきりとお顔が見えていないので、左眼で見ている感じになります。
「じゃあ私も一緒に探してみましょう。」
彼も一緒になって探してくださって、時間は大丈夫なのでしょうか?
「あ!動かないで!」
え?と思ったらその、私のお尻の所に落ちていたらしく、お尻、大丈夫よね?恥ずかしい。
彼は拾って下さいました。
「何か洗うものはありますか?」
コンタクトが落ちたので、洗浄をしないと。
本当は予備のコンタクトにすべきなのですが、あいにく普段使っていないので、持ち歩いてません。
「少し待っていて下さい。」
そう言って何処かへ走っていきました。
暫くすると、不織布?に包まれたコンタクトを持って戻ってきてくれます。
「あまりお勧めはしませんが・持ち合わせがないのですよね?一応コンタクト用の洗浄剤で洗い流しましたので大丈夫と思いますが。」
私はありがたく受け取り、無事コンタクトを眼に。
あ、本当に急いでいるようで、
「ごめんなさい、急いでいるので!」
そう言って去っていきました。
この時既に私は彼に恋していたみたい。気が付いていなかったけれど。
そして最近入ってきた才村さんという新人さんなのですが、
「わ!彼凄いですね!」
この女性も彼に気が?
実は女性陣にも彼は好評です。
私はこの想いを彼に告げるべきかどうか悩んでいました。
私の方が年上ですし、背も同じぐらいのようですし。
実は彼の事を何一つ知らなかったり、そう、言葉を交わすのは会社の時だけ。
時々プライベートで見かけても、言葉を交わした訳ではないですし、お互いの趣味とか、そう言ったお話をした事もないですし。
そんな時、その日はやってきました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます