第183話 友郁の事を忘れてしまうなんて

「順平さん?その、私の前にも、愛し合った女性がいるの覚えてます?」


「え?何の事?」


「え?」


「え?」


「その、才村さんですけど?」


「才村さん?受付の?」


「ちょっと順平さん?どうしたのですか?まさか才村さんの事、忘れたのですか?」


「どうしたもこうしたも、才村さんがどうしたんですか?」


「ちょっと待って下さい!」


泉が慌てるけど、どうしたのかな?


うーん、才村さん?どうして泉はそんな事を?


何か泉が道具を使ってしゃべってるようだけど、何かなあれ?

もやもやが消えない。

慌てた泉が僕の方にやってきます。


「あの、少し話してみて下さい。」


ええと、何?


《順平さん?森江さんから連絡があったのだけど、どうしたのかしら?》


《ええとどちらさん?》


《え?本当にわからない?友郁よ?》


《友郁?ええっと、友郁?うーん友郁?う?あ?なにこれ?頭が、割れそう・ナニコレ?》


暫くそうしているうちに、落ち着いてきました。


あれ?僕はどうしてたんだっけ?


《順平さんどうしたの?しっかり?》

あれ?なんで友郁の声が?ああ、魔道具か。


《あれ?友郁どうしたの?って、うん?あれ?友郁?僕どうしてたんだろう?》


《そこに森江さんがいると思うけれど、わかる?》


森江さん?ああ、泉か。


《泉なら隣にいるけれど、どうかした?》

え?何これは?

僕、何か変だ。

そう、僕は友郁の事を忘れていたんだ。


そしてそんな状態で泉を抱いた。

いや、泉を抱いた事はいいんだ、お互い合意の元での出来事だから。

問題はそこじゃない。

僕が友郁の事を忘れていたという事だ。

信じられない。

しかも僕は2夜続けて違う女性を抱いた。


僕はどうしたんだろう?

体調が悪くなった事はあるし、一時的な記憶の混乱もあったけど、僕はさっきまで泉と普通に接してたし、全く違和感を感じては、いや、違和感はあったような気がします。

そしてこれは、何か問題があるんじゃないか?


泉が心配そうにこちらを見ています。


《才村さんどうしよう?そう言えば昨日、順平さんおかしかったのよ。》


《森江さん、どうおかしかったのでしょう?》


《その、突然順平さんの眼が変に動き出して、私思わずその眼を見たの。そうしたら、2人の別の私が映っていたのよ。》


《それ、予知とかじゃ?確かあまりにも負担がかかるので、ほとんど使えなかったスキルでは?》


《あ!そうだわ、そう言われると、そうかも。そしてね、一方の私ですが、絶望してしまって、自殺してた。その後才村さんは順平さんを責めていたわ。》


《え?森江さんが自殺?》


《ええ。そしてそのもう1人は、順平さんと肌を重ね、才村さんも一緒になって。更には私と才村さんは笑顔で順平さんの周りにいたわ。あ、思い出したけど、足元にはお互いの子供がいた気がするのよね。》


・・・・未来視?

僕は未来視を使っていた?

あれは・・・・使うと後で大変な事になるから、あまり使えなかったんじゃ?


そしてここで、また痛みがやってきます。


あれ?視界がぶれる。


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