再び王都

第178話 憔悴しきった森江泉

暫く抱き合っていたけれど、森江さんは我に返り、僕から距離を取ってしまいます。


「あ、その、ごめんなさい!こんなつもりじゃあないんです。」


よく見れば、森江さんの顔は、顔は相変わらず整った顔立ちですが、顔色が悪いです。

どうしたのか、すっかりやつれてしまったというか、憔悴しきっている、そんな感じ。


「森江さん、どうしたんだい?」


「あ、ごめんなさい。さっき泉って言われて、期待しちゃった。ごめんなさい。」


つい泉って言ってしまった。だけど、


僕は無理やり森江さんの手を取り、


「泉、僕の方こそごめんよ。泉の気持ちは分かっているつもりだったんだけど。才村さん、友郁を選んでしまった。」


何とか僕から逃れようとするけど、その力は弱々しい。


「いけません!誰かに見られたら、誤解を与えてしまいますわ!」


もうすでに手遅れ。


「わずか2日だったけど、泉にとってはとてつもなく長い時間だったんだね。」


諦めたのか、僕がつかんだ手をもう振り払おうとはせず。

そのまま僕は泉を抱きしめて・・・・


「あ・・・・」


「ごめんね泉、僕は気づけなかったよ、泉がここまで僕を想ってくれてるなんて。」

「順平さん、やっぱり私、順平さんが好き・・・・うう・・・・」


泣き始めたので、泣き止むまでそっと抱きしめてあげます。


そんな折フェンリルから念話が。


【おい、中々に沢山ドロップしたが、どうするのだ?】

そうだ、ダンジョンの魔物って、死体が残らない代わりに、アイテムをドロップするんだった。


誰かに頼むしかないかな。

そう思いつつ、周りを見ると・・・・いた、見知った顔が。

何だっけ、何とかパーティ、そう、火炎の罪”だ。

彼らに頼むか。


僕は落ち着いた泉から少し離れます。

「ちょっと待ってね。と言うか一緒に来る?」


泉は躊躇いがちに僕の手を握ってくれて、一緒についてきます。


火炎の罪”のパーティの方へ向かい始めたら、向こうも気が付いてくれていて。


「おお!いつぞやの。あの魔獣は君のか?」


「ええ、僕の従魔ですね。」


「そうか、すまん助かった。ダンジョンから魔物があふれてな。我々もギルドの依頼で討伐しておったのだが、いかんせん数が多すぎてな。正直危なかった。」


「間に合ってよかったです。泉が教えてくれて、急いで戻ったんです。」


「うん?君は王都にいなかったのか?」


「メールローにいたんですよ。」


「え?メールロー?えらい遠くに行ったんだな?だが、ダンジョンから魔物があふれたのは、ここ2日ほどだが。メールローは早くて3日はかかるぞ?」


「あ、あの従魔に乗れば、あっという間ですよ。」


「そうか。それにしても君の従魔は強いな。」


「あ、そうだ!魔物はあいつに任せれば問題ないので、皆さんに是非やってほしい事があるんですよ。」


「うん?我々に出来る事かな?」


「ええ。僕は今から今回の原因を調べたりしたいのでその、申し訳ないけど、従魔が仕留めた魔物のドロップアイテム、回収してほしいんですよ。」


「あ?そんな事か?あの魔獣が魔物を仕留めてくれるんならお安い御用さ。」


僕はかばんを一つ渡します。


「これに入れて下さい。」


「わかった。これはあのカバンだな。」


火炎の罪のリーダは、あっさりと引き受けてくれました。

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