第179話 何かが視える

僕は改めて泉を見ます。


先程まではやつれていた感じに見えましたが、今は何だか輝いて見えます。


そして、手を握っている泉の動きが何か変です。ここで目に違和感が。

泉が3人に見える。一人は止まっています。全く動いていない。


後の2人ですが、1人はここで手を離した泉。

もう1人はずっと手を握っている泉。

そして目の奥がちかちかします。

あ、僕も動きがとまっている?


今2人の泉が行動を起こしているような?

それを僕は見ている?


何これ?え?え?


しかも僕の体は動かす事ができません。というか周りも動いていない?


僕はよくわからないけれど、2人の泉の動きを追っていきます。


途中なんだかすごいスピードで時間が進んでいきます。


そんな中手を離した泉の方は、


何だかすごい絶望感、しかも更にやつれていきます。


そんな中、あ!っと思いましたが既に遅く、

「順平さんとこれ以上何もできないなら、生きていけない。」


そう言って、ナイフで自身を貫いたじゃないですか!


一突きでは死ぬことができなかったのか

喉をつき、腹をつき、最後は心臓を突き刺します。

ブルっと震え事切れる泉。


そして駆けつける友郁。


「ああ!どうして!順平さん、どうして森江さんを見捨てたの?酷い!こんな人とは思わなかった。人でなし!」


え?なんだこれ?


そしてもう1人の、僕の手を握っている泉は、


僕に向けるその笑みは魅力的で。

そして、何度も肌を重ねていき。


「やっぱり順平さんなしでは生きていけない。」


そう言って幸せそうな表情をする泉。

何?何がどうなってるの?


さらに時間が経ち、


友郁と泉が何やら仲良くしている姿が見えます。

え?3人で寝てる?


「こうなる事は分かってましたよ?それに、何だかこちらの常識が頭の中に入り込んで、森江さんを受け入れちゃいました!」


友郁が何か言っている?こちらの常識?



え?え?

これ何?


そこでこの、目の違和感は終わったようです。


気が付けば、心配そうな表情で森江さんが僕を見つめています。そしてあれ?膝枕?

僕は泉に膝枕をしてもらってました。


あれは何だったんだろう?


「泉、僕どうしてた?」


「あ、その、何だか目を見開いて、両目が変な動きをしてたんです。それで、私その眼を見たら、両目に違う私が映っていて。1人は、ナイフで自殺して、もう1人は、順平さんと愛し合って、更には才村さんも受け入れてくれてるのが見えました。」


これは僕が視たのだね。

それを僕の眼から泉は視た?


「う、スキル?あ、なんだか今、泉の分かれ道みたいで。」

泉はしっかり手を握ってくれます。


「あれが本当なら、私は、ずっと握っていたいです。」


「うん・僕もだよ、泉。」


「あ、その、現実にはいつも手を握っているわけじゃないですよ?今は、と言う意味ですわ。」

「あれは、未来なのかな?並行世界とはまた違うような感覚でしたが。あれが本当なら。」


順平は、知らずに未来視と言うスキルを使っていたようです。


並行世界でも使った事があるようですが、条件が厳しいうえに、消耗が激しく、ほとんど使わなかったスキル。

それがこんなところで発動するとは。

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