第124話 アーダ・ギルベルタ・クレメンティーネ・イザベル・グビッシュ

・・・・僕はその女性に回復魔法を唱え、ポーションを手渡します。

「回復魔法で体は恐らく元に戻ってますが、3日ほど何も口にしていないと思うので、このポーションを飲んでください。」


その女性は躊躇う事なく、一切の疑いを見せずに一気に飲み干します。


暫くして、ベッドから起き上がります・・・・が、その彼女は今裸・・・・


「きゃあ!」


「ご・・・・ごめんなさい!」

僕は背を向けます。あ、服あるのかな?僕はサイズの自動調整機能付きの、女性の衣類一式の入ったカバンを取り出し、才村さんに手渡します。


「これを着せてあげて下さい。」


僕は少しめまいがしたので、座ります。

その間、周りが


信じられない・・・・

まさか生還するとは・・・・

奇跡・・・・

鬼籍・・・・


いや、それ違うと思うよ?



暫くして、僕の用意した服を身を纏った女性がやってきます。


「こちらの女性から聞きました。まずはお礼を言わせて下さい。この命を助けていただいた事、感謝いたします。」


僕はその女性を見ます。

・・・・この国の王様の娘なんだよな?

それはもうすさまじい美貌というのか・・・・

先程まではやつれていて、顔色も悪く、正直顔つきもよくなかったので、これが同じ人物?と思えるような変化です。


「まだ時間が経ってませんが、体に異変は見当たりませんか?」

僕は尋ねます。

「ええ・・・・いまだかつてないほど快調ですわ。」

「それはよかった・・・・」

さて・・・・これからどうするかですが・・・・

するとこの女性、周りを見渡し・・・・


「わが夫はどうした?今更だが・・・・」


「は!残念ながら命を落としてございます・・・・」

「それはそうだ。どうやら王族の中で生き残ったうち、私が一番年上らしいからな。」

「そのようでございます。いかに公爵とはいえ、あのお方も王族。致し方ありませぬ。」


「死んではもう仕方なかろう。あの男、わが夫として・・・・ただの飾りだったからな。いや、私がか・・・・あの男は・・・・男色だったのだよ。結局一度も抱いてもらえなかった・・・・」


「臣下一同、中々お子を授からぬご様子で、心配はしておりましたが・・・・まさかの公爵様が男色でしたか・・・・」


「ああ、父上の従弟のようだが・・・・あのような輩が公爵とは、世も末だな。それに・・・・夫が死んだのだ。緊急ゆえ、ただいまを以て王家への復帰を宣言する。」


・・・・僕はこの女性の変化に驚いています。


「ああ、恩人よ、すまんな。今現在この場で意識のある中では我が立場が一番上なのでな。ついでに王家への復帰を宣言させてもらった。」

・・・先ほどまでの人の好さそうな女性と同一人物?

「さて・・・・我は生還したが、他の者はどうなのだ?それと共に・・・・なぜ我が最初だったのだ?概ね万が一我が死んでもどうでもよかったのか?くくく・・・・残念だったな。まあいい、話せ。」


「はっ!グビッシュ王家の、アロイジウス国王陛下のお子様ですと、アーダ様の他はアルノルト王子、ザーラ姫の3名でございます。そして王弟殿下のご子息様が3名、ご息女様が4名でごさいます・・・・このうち、成人されておりますのは、陛下の子が3名と、王弟殿下のご子息とご息女それぞれ1名の5名でございます。他はまだ成人ではございませぬ。」


「わかりました。さて・・・・そちらは・・・・転移者でございましたか?ああ、申し訳ございません。まだ名乗っておりませんでしたわね。私アーダ・ギルベルタ・クレメンティーネ・イザベル・グビッシュと申します。もはや公爵夫人ではありませんので、婚姻前の名を名乗らせていただきましたが。まあ長いので・・・・アーダとお呼びください。」


彼女の名前らしい。長い・・・・


ああ、そうか・・・・この国の名前はグビッシュ王国。

王族の苗字がそのまま国の名前なのですか・・・・

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