第73話 森信君の暴走

僕はこの時、自分が本当は何をしたのか気が付いていませんでした。

単に相手のスキルを奪った?吸収した、つまりは吸い出した?との認識です。


そして僕は他の5人をどうするかと思って、この勇者君、森信君でしたよね、確か。僕は彼に背を向ける格好に。

他の5人もそれなりの怪我を負っています。

一番危なさそうなのは、半ば脚がちぎれている人です。

彼は多分後から勇者パーティに入ったメンバーでしょうね。

そして、同じく後からやって来たメンバーが、何とか止血をしようと一生懸命足を縛っています。


流石にこのままでは、彼は死ぬだろうなと思ったので、彼の足だけは回復してあげようと。


「治療しようか?」

僕はそう提案します。

怪我をしてる人は、半ば意識が無い様子。

そして一生懸命足を縛っている人は

「た・・・・頼む。くそ!勇者と言っていたから信じてついてきたのに!何でこうなったんだ!」

そんな事を言っていますが、この6名、侍女さんに対し好き勝手しまくったそうです。

なのであまり同情はできません。


「とにかく足のこの傷は治してあげるよ。あとはまあ、自分でどうにかして。その後は彼らに着いて行くか、全力で謝り、戻るかは君ら次第だろうが、そこまで面倒見れないからね。」


僕は怪我している人の足に手をかざし、治るようイメージを。

すると・・・・

肉が盛り上がり、見る見るうちに傷がふさがっていきます。

暫くすると、その傷も完全に消えたように見えます。


「お・・・!!・・・・凄い!ありがとう!おい、助かったぞ?帰ろう・・・・」

「うう・・・・あ・・・・足が・・・・動く?」

僕はこの時完全に油断していました。内元君も僕のしている事をじっと見ていますし、才村さんも僕のする事を見ていましたから。


そして、気が付けば、背中に衝撃と共に、鳩尾あたりから何かが突き出てきました。

「糞!なんかしただろうリーマン!許せん!この俺様に何しやがった!」

「きゃああ!先輩・・・・!先輩!」

才村さんが僕の手を取って泣いてます。


僕は何が起こったか分からないまま、血で染まっていく鳩尾と、剣?をボーっと眺めていました。

「さ・・・・さいむ・・・・ごほっつ」

僕は膝をつき、混乱しました。

「俺様に手を出すからこうなるんだ!死ね!」


すると内元君が、ボーラでこの森信君を拘束します。

「何やってるんだ!僕に続いて常山さんまで手にかけるとは!」

「さ・・・・むら・・・・かい・・・・を・・・・」

意識が・・・・

「あ・・・回復します!どうか・・・・!」

「うち・・・・くん・・・・けん・・・・ぬい・・・・ごほっ」

「抜きますよ?」


内元君が剣を抜いてくれます。ドバっと血が噴き出しますが、才村さんが回復魔法を使っているので、血が止まり、傷口がだんだんと消えていきます。

僕も再び回復魔法を唱え、自身の怪我を治療します。


そして・・・・フラフラになりながら立ち上がります。

内元君のボーラで身動きの取れない森信君。

「一度・・・・なら、見逃し・・・・ましたが・・・・今回は・・・・ゆる・・・・せません・・・・」

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