第20話 回復魔法
「どどどうすれば?こ、こんな傷、治るの?」
勇者の彼女?がうろたえています。普通の女子高生ならこんな場面に遭遇しないでしょうし。
「君しかいない!僕も手伝う!どうすればいい?」
僕はそう訴えます。そして才村さんですが、
「私も手伝います!」
才村さんが傍に来てくれます。
「えっと、こう、手をかざし回復!と祈ればできるはずなんだけど。」
だがあまり効果はなさそう。傷が深すぎるのと、まだ回復魔法のレベルが低いのでしょう。ぱっと見変化はないです。
やはりここは、僕と才村さんが今覚えて、3人で回復魔法を使うしかない?そう都合よく覚える事ができるか疑問ですけれど。
「こうかな?」
まあ、僕にできるとは思えないけど、見よう見まねで真似をしてみます。
才村さんも同じくしてているけれど、スキルがないから無理です。
「ど、どうしよう、回復!治って!」
焦る勇者の彼女。目の前には死にかけている、血を流している人が居るから当然?
「落ち着いて。ええとこう手をかざし、回復と祈るんだね?もう一度やってくれないか?大丈夫。君なら上手くいくさ。僕達もそばにいるから。」
何とか落ち着かせ、もう一度回復魔法を促します。
この間にも止血をしておきます。右肩から腹にかけてズバッと切られているから、止血らしい止血はできないけど、しないよりはまし?
僕は言葉には出さず、見よう見まねで同じようにやってみます。才村さんも僕の考えを察したのか、やはり止血しながら無言でやっています。
「掌に魔力を込めて、治って!」
すると、ようやく青年の傷が治り始めます。
いや、治り始めてはいたけれど、傷が大きすぎたので、傷を塞ぐ事ができていなかっただけ。
だけど、何度も行っているうちに、何とか傷口がふさがり始めた様子。
僕も才村さんも必死に止血をし、祈っていると、何か光った気がしたけど、それが何かを確認する余裕がないまま、青年の出血をを少しでも抑えようと努力をします。
勇者の彼女が何度も回復魔法を唱えたので、ようやく出血が止まります。
だけど、かなりの血を失った青年。
顔が真っ青。回復魔法では失った血までは元に戻らない、という事なのかな。
いや、白い?血の気が完全に引いている感じでこれは流石に命の危険がありそう。
「才村さん、侍女さんを呼んで。」
今日は中に入ってくれなかったんだね。
「は、はい!」
慌てて出ていく才村さん。そしてすぐに2人を連れて戻ってくれました。
「これは!早く医務室へ!」
そうは言ってもどうやって運ぼう?
担架なんてないし、人数だけはいるけれど。
「怪我人がいる。血を失いすぎて危険なんだ、協力してほしい!」
何人か立ち上がってくれます。
そして、机の上に青年を寝かせ、机ごと運びます。
食堂を出ると、控えていた侍女たちが協力をしてくれます。
女性とは言え人数が多いので、1人当たりの重量は軽減し、かなり楽に運ぶ事ができました。
医務室へ入ると、色々な薬品?試験管みたいのに何かが入っているのが沢山置いてあります。何でしょうかあれは。
侍女の誰かが連絡をしていたようで、既に何か準備をしています。
「血を失ってるんだね?これを飲めば大丈夫。」
そう言って、ポーションと言うらしい、を飲ませ、青年の顔色は良くなったようです。
その後回復魔法を使った彼女が、お礼を言いに来ます。
「あの、その、色々ありがとう。私ったら出血の多さに驚いちゃって。2人には、同じようにしてくれてるって思うと、勇気をもらえました。ありがとうございます。」
なんだかんだ言って礼儀正しそう。
「まあ気にしないで。だけど、かいと君と言ったかな?あの勇者君は。君は彼女なのかい?」
「ええ。でも、昨日まではあんなんじゃなかったんだ。もっとまじめで優しくて。だけど、今はまるで別人。私どうしたらいいかわかんなくって。」
「暫く距離を置くといい。はたから見ていても、昨日と今日の彼の変わりようは異常だよ。何なら僕達の所で暫らく過ごしたらいいさ。」
「ええ、そうさせてもらいます。」
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