12/9 サンタクロースがあわてんぼうな理由

 あわてんぼうのサンタクロースという歌がありますよね。どこかお茶目でおっちょこちょいで、なんだか憎めないかわいいサンタさんの歌ですが、今日はそんなあわてんぼう、というか準備万端なサンタクロースが我が家にやって来た実体験を語ろうと思います。


 あれは私がまだ5歳か6歳くらいの頃でした。もしかしたら小学校に入っていたかもしれませんが、いずれにしろサンタさんの存在を疑うことなく信じていた時代のことです。

 クリスマスまであと一週間という日のこと。その頃にはすでにサンタさんに欲しいものをお願いし、お手紙まで書いて、後はクリスマスの日の朝に枕元にプレゼントが置かれているのを楽しみに待つばかりでした。


 丁度その日、私は暇を持て余していて、退屈しのぎに父親の部屋で勝手に寛いでいました。とくに禁止されていた訳でもなかったので、日頃から父親の部屋に入ることはよくあったのですが、その日は何やら見慣れないクリスマスっぽい絵柄の描かれた紙袋が部屋の窓の下に置かれているではありませんか。

 お世辞にも良い子とは言えなかった当時の私。親の部屋のものを勝手に漁るという鬼畜な行為にも何の抵抗もありませんでした。そんな悪童だった私は、もしかして……という期待を抱きながらどきどきと紙袋の中を覗き込みます。

 露わになる中身。どこかで見たようなファンシーなパッケージ。その中身は――。


「これ私が欲しかったお姫様変身セットやん!」


 私がサンタさんに頼んだはずのクリスマスプレゼントでした。


「あわてんぼうのサンタさんがプレゼントを早めに持ってきてくれた!」


 単純でおバカだった私は疑うことなく母親と父親に大喜びで報告しました。今考えれば両親があらかじめ買っておいてクリスマスまで保管するつもりだったプレゼントを、私がクリスマス前に見つけてしまったということなんですよね。ですが当時はそんなことに思い至るはずもなく。そして両親も子供の夢を壊さぬよう一緒に喜んでくれました。今思い返してみると、報告した際の両親の笑顔はかなり苦笑いだったような気がします。


 あわてんぼうのサンタさんがやって来たというよりかは、親が隠していたであろうクリスマスプレゼントを私が勝手に見つけ出してしまったという、そんな子供の頃の悪行にまつわるお話でした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る