第3話
僕のストレス発散方法っていうのは飲酒くらいしかない。家の近くにあるスナックに、何気なく入ってから、僕の接客をしてくれた女の子と意気投合。すっかり気にいって、常連になった。
もちろんその女の子が出勤の曜日に合わせて、次の日が休みになるように仕事のシフトを組んでもらった。でないと次の日の業務で飲酒運転をする破目になるから。
彼女は僕と連絡先の交換をするように迫ってきた。それ以来、彼女は店に行かない日以外のプライベートな時間も、毎日のようにメッセージをくれた。それで癒やされ益々、
仕事では相変わらず非力な青年が横に座っている。痩せの大食いと良く言うが、彼ほどそれに当て嵌まる男はいないだろう。仕事では全く役に立たないのに呑気なものだ。それがやけに苛立つし、ストレスに拍車を掛けてくれる。
そんな彼がいつもと違い、少し元気がないように見受けられた。普段は車内でも余り会話をしないが、思い切って聞いてみた。
実は母が病気で手術を受けなきゃならないんです。でもこの仕事って時給もそんなに高くないでしょ?残業代もつけてくれないし。
いくら足りないのか聞いてみると十万円と言った。働き始めて三ヶ月ほどだが、それくらいは貯まっていた。有り金を
僕は毎月一万円づつ返す事を条件に貸してあげる事にした。そして彼に金を渡してから三日目、彼は来なくなった。派遣元は別会社だったのでなんとか聞き出して彼の会社に連絡したが、音信不通であり、個人情報と言う事で、連絡先も教えてもらえなかった。まぁ馬鹿なのは僕と言う事になる訳だが、どこか釈然としないものがあった。
そうなると一層に彼女の癒やしを求めるようになった。そして遂に食事の約束を取り付けた。但し条件がついた。なんでも彼女は一人娘を育てるシングルマザーなのだが、同居する母親に面倒を見てもらっているそうだ。しかしお母さんの体調が
しかしこの約束が、僕の病を決定的にする事になったのだ。
ある日、僕は彼女の出勤でない日に店に行った。すると店のママと他の客が話しているのが聞こえた。どうやら彼女の話しをしているらしい。僕は無関心を装い聞き耳を立てた。
そうなのよ。あの
急に胸焼けがしてきた。そんな時、その客と彼女が来店した。彼女は僕に気付き、バツが悪そうにしていたが、こんばんわ、と作り笑顔で挨拶をしてきた。僕は胸くそ悪くなって帰った。
僕はその後、長文のメッセージを彼女に送った。内容は今となっては余り覚えていないが、裏切られた事の恨み節を長々と綴った気がする。
しばらくは
この時、僕ははっきりと聞いた。自分の心が音を立てて壊れていくのを。
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