16ページ目:きっかけはそれだけ
秘めていた思いを ひとこと
唇に上らせた
ためらっていた 一歩を
踏み出してみた
きっかけは それだけ
震える指先と
口から出そうな心臓と
胸で膨れ上がった不安
それらは全て押し殺した
きっかけは それだけだったけれど
坂道を駆け下るかのように
わたしの周りが変わっていった
いつしか高く遠くなった空
枯れ果てた紫陽花
振り返れば足元には長い影
季節は冬へと駆け足で
いつの間に と ついた息は
白く濁って風に消えた
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