第3話 ~Ⅲ~
本当に古い書物だった。
恐らく昭和前期に書かれたような代物で、日本語の表記も、現在のモノと比べると、どことなくおかしかった。
興味本位から、なんとなくその本を手に取り、パラパラとページをめくった所、ある一文が、俺の興味を強く惹いた。それを見た瞬間に、俺はこの本を購入する事を決め、代金を払い、そそくさと店から出て行った。
古本屋で見つけた本のあるページには、こう書かれていた。
”死者と会話する方法”
俺は、街中を早歩きで歩き、とにかく手元の本を落ち着いて読める場所を探した。少し歩いた所で、朽ち果てたベンチを見つけた。軽く座席の汚れを払い、俺はそのベンチに腰を下ろした。
しばらく読み進めた所で、この本が一体どういう代物なのか、漠然とわかってきた。どうやら、今から何十年も前の魔術や呪いの類を編集した魔術辞典のようなモノだった。
こんな本に興味を示すなんて、いよいよオカルトで、まともな人間ならば、一時的な暇つぶしで済ましてしまうだろうが、この時の自分は、どこか気が触れてしまっていた。そこから、時間があれば、この本を手に取り、食い入るように読み進めた。
4日程かけて、俺は、その古本屋で買った怪しい本を読破した。結局、最初に見たページ以降、自分の興味を惹く項目は他に存在しなかった。
だが、”死者と会話する方法”と記載されたあのページは、不思議と何度も読み返し、その方法を暗唱できる程になっていた。
本当に、この本に書かれている方法で、死者と話せると本気で思っているのか、と何度も自問自答を繰り返したが、手段を知ってしまった以上、自分の中の何かが、この方法を試したくて仕方がない、とそう訴えていた。
結局、散々葛藤したあげく、俺はその怪しい”魔術”を実行に移す事を決めた。
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