第2話 ~Ⅱ~
浅井は、幼い頃から心臓病を患っていた。そのせいで、活発な性格とは裏腹に、身体が弱く、小学校の頃は欠席が目立っていた。家が近い事もあり、よく俺が学校での配布物を届けていた。
中学校に上がって、体力がついたのか、浅井の病気は、それ以前より落ち着きを見せていた。念のため、激しい運動は控えていたが、それ以外の事は特に問題なく、一緒に行動する事も多かった。
中学生の頃のある休日、仲が良かった俺の家族と浅井の家族は、ピクニックがてら、近くの風凪山に行った事がある。その時の浅井は、とても上機嫌で、丁度桜の開花時期だった事もあり、満開に咲いた桜の木々に、いたく感動していたものだ。
高校生になって、俺と浅井が正式に付き合いだしてから、2、3か月後ぐらいの秋頃だった。携帯電話のメールのやり取りで、体調が良くない、という趣旨の返事が、よく来るようになった。そこから学校を欠席する事も増えた。
俺は、心配はしていたが、恥ずかしさのようなものもあり、大丈夫、すぐに元気になるさ、と有りがちな事しか言ってあげられなかった。
実際問題、中学の時は、元気だったし、すぐにまた良くなるだろうと楽観視もしていた。しかし、浅井の容体が改善に向かう事は、遂に無かった。
いよいよ、という所まで来て、浅井は入院する事となった。毎日学校帰りに、俺はお見舞いに向かい、少しでも浅井を励ませられればと、自分なりに動いた。
しかし、そんな行動も空しく、年を越え、あと2か月程で二年生になるという時に、浅井は、病院のベッドの中で、静かに息をひきとった。
浅井が死んでしまったという事を理解した時、悲しいとか、そんな単純な気持ちが沸いてくるのではなく、空虚な、身体の中から、いろんな力が抜けてしまうような、そんな感覚を覚えた。今、現在でも、その感覚は続いている。
学校帰り、休日、よく浅井と一緒に過ごしていた場所を回る。そんな、他人から見たら、おかしな行動までとるようになっていた。
親には話せない内緒話をした公園、学校帰りによく買い食いをしていたコンビニ、二人で手を繋いで小走りで抜けた踏切。そのどれもが、輝かしい記憶を思い起こさせ、今も、そこで、浅井が待ってくれているような、そんな錯覚を見せていた。
(もう一度・・・一度だけでいい、浅井に会えれば・・・)
叶わぬ願いが、俺の脳内を支配していた。
そんな廃人手前のような日々を送る中、町の古本屋で、俺はある一冊の本を発見する。
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