LATE
チョコチーノ
独白
私は殺人鬼だ。
何人も、何百人も殺している。
何食わぬ顔で、さもそれが当然だと言わんばかりの心情で。
数多の人を、獣を、存在を殺し続けている。
別に最初からこうだったわけではない。
最初は皆が幸せになれるように、尽力していたつもりだった。
できるだけ、できるだけ、多くの存在が幸福になれるように努めていた。
命の尊さとか、命の重さとか。
そういうものを皆に訴えていく度に、私の心も晴れやかになっていくような気がしていたんだと思う。
命を肯定することで、世界や存在や、何より自分自身を肯定している気分だったのかもしれない。
しかし、いつからか私は変わった。
初めて人を殺した時は、心が痛めていたと思う。
殺すと決めた時は躊躇していただけだったが、いざ殺すとなると虚無感が私を侵していった。
どうしてこうしたくなってしまったんだろうと、グルグルと考えていた。
殺してしまった人の顔や、声や、姿や、記憶が、ずっと私を責め立てているような、そんな気がしてならなかった。
しかしそんなことは、数週間もすれば些細なことに変化してしまった。
私が悪いんじゃないと理解したからだ。
いつからか私はタガが外れたように、軽々と人を殺すようになった。
理由なんてなんでもいい。
未来のために必要だから。
最期の言葉を聞きたいから。
綺麗な死際にしたいから。
その美しい最期を見たいから。
当然の結果だから。
前々から気に食わなかったから。
皆が求めているから。
邪魔だったから。
あってもなくても変わらない理由で、私は人を殺し続けた。
最早どれだけ人を殺しても、私の心は全く傷つかなくなった。
恐ろしいのは、この異常とは言えない状況に気がついたのが、何年も経過した後だってことだ。
この状況に気がついても、私の行動は何も変わらない。
人を安易に殺して、生かして、また殺して。
その繰り返し無しでは、私はもう生きてなどいられなかった。
そしてようやく気がついた。
彼らの命なんてものが、いかに軽く、儚く、脆いのかと。
これ以上ないくらいに彼らの命は粗末なものなのだと。
命の尊さとか重さを訴えさせる度に、私は胸を詰まらせるようになった。
どれだけ声を大きくして叫んでも、結局彼らは死ぬのだから。
結局、私が殺してしまうのだから。
私は殺人鬼だ。
これまでも、きっとこれからも。
最早私は、人を殺さずにはいられない様になってしまっている。
人を殺さなければ、私はもう生きてはいけない。
最初の頃の私に戻るには、手遅れだったのだ。
もちろん考えすぎなのは分かっている。
でも、考えずにはいられない。
ふとした時に考えてしまって、思い悩んでいる私がいる。
でも終いには、その悩みすらもネタにするくらいだ。
全く呆れ返って何も言えないとはこのことかもしれない。
人を殺すことくらい、私にとってはもう何ともない。
きっと他の皆も同じだろうと、心の底から思っている。
これを読んでいる君だって、私たちと同類なのだと考えている。
私たちは殺人鬼だ。
いつの日か、皆を生かせられる時が来るのではと考えながら生きている。
そんな、出来もしないことを考えながら、私は書いている。
LATE チョコチーノ @choco238
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