第51話 JKは、恋愛を食い物にしている(個人の見解です)
『やっぱり、好き。』
大好きな人と”恋人役”になれて胸がドクン、ドクンといっている。
色々なことがあって、色々なことを許してもらったのに、”もう駄目になってしまったはずの思い”に歯止めがきかない。
それでも、何とか自分をおしとどめる。
『わたしは、けんたろーの恋をおうえんするんだ!ぜーーーったいにけんたろーを幸せにするんだ!』
わたしはその誓いを心で叫ぶ。
”好きな思い”を抱えたまま、わたしは大好きな人の”好きな思い”をおうえんする。
心と行動が正反対の方向を向いているせいか、心と身体がバラバラになったみたいになる。
身体が重たくなっていく。
明日。
明日になったら、千里さんとけんたろーを結ぶ為に頑張ろう…
*********************************
ロミオとジュリエットもとい、ロミジュリ。
正直言って俺はこの話をしっかりと読んだことはなかった。
二次創作などによく出てくるから身分差を伴う悲恋の話だということは知っているのだけれど…
基本的には悲しい話が嫌いなお子様なので読んだことない。
シェイクスピア?知らない名前だね。
「凛と二村君のロミジュリは、私がしっかりとハッピーエンドにしてあげるからねっ☆」
きゃぴっという擬音語が聞こえてきそうなくらい高い声で凛の友達であり、今回の脚本を担当することになった中井さんが俺に呼びかけてきた。
JKマジウザイわ。
ウザさで言うと千鶴さんと同列。
こんな悪口を言っていると好感度が低くなるか?
ならば、言い直そう。
『人の恋愛を食い物にしている奴らは、マジで地獄に落ちろ。』
あら、不思議。
こういったら、女をたぶらかすホストとかヤリ○ん野郎とかにも当てはまる文になる。
女の子を守るためにチャラ男と戦う正義のヒーロー的な。
…はい、違いますね、ごめんなさい。
でも、ボッチ的には中井さんにどう反応していいかわからないんだ。
テンション高い友達の知り合いのリア充JKとかいう未知の人種にボッチが対峙することは、地球侵略にきた宇宙人と会話することとほぼ同義ではないだろうか?
…言い過ぎですか、すみません。
まあ、確かに言い過ぎたかもしれないけど、この状況に加えて、くっつけようとしている女の子(=凛)が既に男の方(=俺)に告白していて断られているという状況も加わっているんだ。
普通に厳しくないですか?
それとも、言っちゃう?
『凛?可愛いよねぇ。でも僕チン好きな女の子いるから断っちゃったんだぁ』とか、凛に断りもなく凛の親友に言っちゃう?
いくらなんでもクズ過ぎない?
というわけで、質問だ。
凛との関係も、凛との出来事も話すことができず、少なくとも善意でグイグイ来ている女の子に対して私はなんて言えばいいのでしょうか?
誰か知っている人がいたら教えてください。
マジで切実(泣)
何なら土下座くらいはしまっせ。
陽キャってこんな日常過ごしてんの?地獄過ぎない?もはや、汚い大人たちの駆け引きと同じような難易度だよね。
漫画とかで同じ人を好きになった展開とかあるけど、今思うと、普通に地獄じゃん。
…周りが。
当人たちは恋を楽しんでいるからいいかもしれないよ。でも、どちらかが振られる未来が見えている中でそのことに触れるのとか難しそう。
俺、生まれ変わっても陰キャがいいな。だって、そんな地獄無理だもん。
と、脳内の固有結界で一人わけわからないオーバーヒートをしていると、どこをどう解釈したのか、中井さんは
「黙っちゃうくらい緊張しちゃうなんて可愛いなぁ。凛ちゃんも可愛いけど、健太郎君も可愛い。あっ。名前で呼んじゃったけど、名前で呼んじゃっていいよね」
と、リア充特有の間合いの詰め方で俺に迫ってくる。
この踏み込みの強さは俺が食物連鎖の下の方にいるからなのか、親友の恋愛話にテンションが上がっているだけなのか判断できない。
その後も、
「演劇でキスくらいはできるよねぇ?」
「いや、キスはちょっと…」
「でも、幼馴染なんだし、事故で唇がくっついちゃったような思い出くらいはあるでしょ?お姉さんに言ってみなさい」
「い、いやいやそんな漫画みたいなことあるわけないじゃないですかぁ」
「あれ?あれれぇ。ひょっとしてひょっとしちゃうのかなぁ?言いよどんだ上に敬語になるなんて怪しさが限界突破してますねぇ」
とかいう会話が続いていく。
デジャヴ!
合宿の時にあれだけ凛に言われたんだから、次に誰かに漏らしたら死ぬ。リアルに。
腹の傷がうずいてくるぜ。
そんな、危険極まりない会話をかわしていった。
会話に危機回避能力というスキルのようなものがあるなら、今週だけで、Gから、Fくらいにレベルアップした気がする。
JKの切れ間ない怒涛の攻めをいなすのは中々に大変だ。
何だったら体重も5kg減った。
千鶴さんの罵倒のせいもあるけど…
そんな風に学校での日常が過ぎて行って、ようやく台本が全部完成したのが本番3日前だった。
「いやぁ。まさか、ここまでかかっちゃうとわ。張り切りすぎちゃった☆ごめんね。まあ、最悪、幼馴染の息ピッタリのアドリブで何とかしてくれればいいから」
とかいう大変ありがたくない言葉を頂戴した。
『あの~、台本通りにやらなくなるなら台本を練ってくれた意味がなくなっちゃうんですけど…。』という至極まっとうな言葉を言わなかった自分をほめてやりたいと思う。
そんなこんなで中井さんから突然、むちゃぶり企画を企画されるのだった。
下手なYoutuberよりもきつい企画を言い渡された。
…まるで、地獄のようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます