第6話 恐怖は、きっとすぐそばに。

千里さんが家庭教師に来た翌日


チリリリリリ


 目覚まし時計の音と共に目が覚める。

 昨日は千里さんにも出会えて楽しかった。ただ、千里さんからの宿題には頭を悩ました。

なりたいものを見つけるのは難しい。

 パソコンでも一杯色々なことを、調べたけれど、しっくりくるものが見つからなかった。

 なりたいものについて調べたことを思い出したりしながら朝ご飯を食べ終わると


ピ~ンポーン


 昨日と同じ間延びした音が聞こえる。ブレザーのネクタイを片手で結びながら玄関にいく。


「もう、遅いよ!健太郎。」


 そこには頬を膨らましながら待っていた凛がいた。


「ごめん、ごめん。でも急にどうしたんだ?」


 幼馴染だし、仲も悪くないけれど一緒に登校なんてイベント、入学式の時以来していない。中学の時は一緒に登校していたのだが、それで揶揄われた経験があり嫌な思いもしたことがあった。

 だから、それが嫌なこともあって、凛から『高校の登校も一緒に行こうよ』と言われていたのに断ってしまったのだ。


 (己、入学式の俺め。何で凛がこれからまた一緒に登校しようって言ってくれた時に断ったんじゃボケ。少しくらいのからかいがどうだって言うんじゃ。こんな美少女と登校できる二年間をふいにするとか馬鹿じゃろ~)


 なんて思ってベッドでもだえまくった経験もある。ってかいまだに思っている。何だったら先週も「なんでじゃー」って頭をかきむしりながらベッドの上で叫んでしまい母さんに叱られた。


 あの時の母さん、息子を死んだゴキブリのように気持ち悪そうにみていたなぁ。脳の病院に行こうって真顔で言われたっけ。


「か、家庭教師のこと聞いたから気になっちゃって。」


 憤死しそうな恥ずかしい回想をしていると、何故か凜が聞きにくそうに言ってきた。


「ああ、母さん経由で聞いたのか?」


「うん。」


 気まずそうだけれども切実な様子といった感じで聞いてくる。

 (ああ、模試のことを自分の母親に言ったせいで母さんたち経由で模試のことが俺の親に伝わったことを気にしているのかな?それで家庭教師が俺につくことになって迷惑かけたとか思っているんだろうか?なら可愛い幼馴染のために心配を払拭してやろう。)


「心配しなくても最初は家庭教師なんて嫌だと思ったけど可愛くて性格もいい先生だったし気にしなくていいぞ。」


「むむむ。そっかぁ。可愛くて性格もいいんだ。じゃあ続けるの?」


 落ち込んだように目尻を下げて言う。


「俺に選択権はねーよ。凜への教え方もパワーアップするかもしれないから期待して待っとけよ。」

 そう言って自慢の白い歯を見せるように言う。


 俺カッコイイ。


「別に忙しいなら、教えてくれなくてもいいけど。」


カッコ悪い俺。


「そっかぁ。まあ、そうだよな、成績も上がってきたって言ってたしな。」


 べ、別に幼馴染に断られて落ち込んでなんかないんだからねっ。


「で、でも、けんたろーが成績下がった上に家庭教師が来て忙しいのに、教えてくれるっていうなら、教えてくれてもいいんだよ。」


 言葉遣いとは裏腹に、慌てたように付け加えてくる。

 なるほど。凛の強がりだったか。それとも俺に気を遣ってくれたのかな?まあ、どっちでもいいか。俺の答えは決まっている。


「おう。俺のが成績下がったって言っても凜に教えれない程は下がってないから安心しろよ。」


 凜との登校を断った経験がある俺だからこそ、ここで凜との繋がりを断つなんてありえなかった。

 だから、中学から続く距離感のままにからかい口調でそんなことを口にしたのだった。


「もう、けんたろーの癖に生意気。健太郎の成績なんて抜いて、むしろ私が勉強教えてあげるし。」

 そう言いながらも頬を赤らめる凜は上機嫌だった。


 凛には志望大学に受からしてやるって高二の時言っちまったし頑張らないとな。



けんたろーの家にしかけた盗聴器で、かわいい家庭教師がきたってのを、聞いちゃったけど、けんたろーのあの様子なら、私のことの方が好きだよね?ポッとでの女の子になんか負けないよね?

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