ゲーム系異世界に転生したので本物のチートと言うものを他の転生者に見せつけてからスローライフを楽しむことにします(短編版)
みし
第1話
それは、ミリオン・エンパイア・オンライン(MEO)をプレイしている最中の出来事だった。このVRMMORPGは魔法帝国の冒険者を演じるオンラインゲームだ。2130年にサービスインされ千万人がプレイするゲームだ。
八幡コータ(35歳独身♂)もそのプレイヤーの一人だ。コータは、一時期攻略勢として活躍したことはあったものの今では完全なまったり勢だ。このゲームは1アカウント最大三人までキャラ作成できるため為、ガチ勢時代のキャラは1年ほど前に封印、まったり釣りゲーを楽しんでいた。その時、突然ブレーカーが飛んだようなノイズが目の前に現れ次の瞬間、見たことも無い空間に飛ばされていた。
そこには同じ境遇らしい元プレイヤーが数百人ぐらい居た。世界的ゲームらしくそこに居る人種や国籍は様々だった。MEOは自動翻訳システムがあり言語が異なっても意思疎通だ。ここでもそれは同じ。そこに女性が現れて言う。
「あなたたちは現世の不幸な事故により転生する運びになりました。管理者の神からのお詫びですがMEOの世界への転生をボーナス付きで用意します。もちろん転生しても構いませんし、元の世界に戻りたいのならやり直す選択肢もあります」
そこで優等生そうな元プレイヤーが「元の世界でとはコンティニュー可能と言う事でしょうか?」
「残念ながら元の世界の破損が大きくコンティニュー不可能です。前世の記憶を消去して転生してもらいます」
どこから「えーっ」と奇声が上がる。
また別の手が上がる。
「MEOの世界に転生する場合は、記憶は引き継がれ、転生ボーナスは貰えるのでしょうか?」
「その場合は、記憶は引き継がれます。転生ボーナスは条件次第です。世界を破壊しないチートは認めます」
今度は「おーっ」と言う声が上がる。
「それでは順番に希望を聞いていきます」
コータは他の転生希望者の出方をじっくり観察する事にした。
「おじさんも巻き込まれたのですか?」
見知らぬJKが声をかけてくる。若い女性に声をかけられるのは10年以上ぶりなのでコータは困惑する。
「そうかな……」
ぼそぼそした声で返しておく。
「おじさんはMEOの世界に転生するのですか?」
JKはかなり不安そうな顔している……。そりゃその年でいきなり、貴方は死にました転生するか選択してください。などと言われても戸惑うのが普通だろうな……おっさん、魔法使い通り越して賢者モードだけど。
「僕はMEOの世界でまったり暮らしたいかな。会社も学校も無いからね」
「そうか向こうには学校が無いのか……」
彼女は学校が無いと言う言葉が引っかかる様だ。恐らく学校に仲の良い友達が居るのだろう。
そのJKと話したのはそれで最後だ。他の転生希望者を観察すると当然どこかの本で読んだようなチート希望が圧倒的に多い様だ。
次は、コータの順だ。
「MEOの世界に転生します。希望は2つ。『ゲームで可能だった全ての操作を転生後の世界でも実行可能にする』ことと『その操作に対していかなるペナルティも受けない』ことです」
女神様はパラメータを眺めながら黙考する。
「代償系スキルは持ってない様ですね。これは貴方の利益になるのかしら?」
ここで女神様が代償系スキルと呼んでいるのは、レベルや能力と引き換えに天変地異などを可能としたりする超高性能スキルの事を差しているのであろう。これらのスキルを代償無しで使えたら世界を破壊することも可能だ。
「ええ、むしろこれ以上は必要ありません」
「では分かりました。その2つを付与します。それだけで十分ですか?」
「では姿やスキル、こちらのキャラでお願いしますで」
サブキャラの方を指さす。
「こっちで良いのですか?メインキャラの方が良くなくて?」
そっちは黒歴史だから使いたくない。
「いえ、絶対サブキャラで」
次の瞬間、MEOの世界にコータは居た。
——
チートとは何であろうか?CHEATと言う単語を辞典で引いてみよう。「自己の利益や目的を達成するために不正手段で相手をあざむく」とある。要するにインチキの事だ。上手いこと女神から言質をつけ文字通りのチート能力を得たのはまだ内緒だ。コータが目指すはハーレムでも英雄王でも無くスローライフ一択。チート能力はそれを実現するための保険にすぎない。
コータが、転生して最初に確認したことは、ステータスウィンドウを表示させてみる事だ。『ゲームで可能だった全ての操作を転生後の世界でも実行可能にする』能力がある以上、当然可能である。ステータスや職業、スキルセットなどは一切確認せず、真っ先に拡張機能ウィンドウを起動し、拡張機能一覧を確認を行う。拡張機能は有料無料で配布されていたゲームの一部を改造する拡張機能だMEOでは公式以外にもサードパーティーや有志作成の拡張機能配布が認められていた。これは誰にでも開かれたゲームを歌うMEOの売りの一つである。コータは拡張機能一覧を確認しいくつかの拡張機能の動作を確認する。特に公式配布の拡張機能の動作を入念に確認する。
「これなら、大丈夫だな」
コータは確信を持ち、次に職業パネルを確認する。転生に選んだサブキャラのスキル構成は釣りLV10、農業LV6と言う感じ。職業は農民だ。釣りキャラなので
農民LV80。限界突破すると上位職に転職してしまうので止めている。ちなみ農民を上限突破させると転職出来る職業は2つあり1つは
開拓領主にはもれなく貴族位が授与される。ちなみにこの上位職実装は、貴族になりあがるルートを聖騎士や勇者などの王道ルートで探していたガチ攻略勢から罵声を浴びた。
コータがこれから向かう村は、コータ自身が開拓した村だ(ちょっとした裏技を使って作った)
今居る場所は、帝国首都の中央首都。漁村からは随分遠い場所に転生した。同じ場所に転生してきた転生者がそこそこ多い。最後に設定した再開地点に転生されている様だ。中央首都はデフォルトの再開地点で、ゲーム内で死んだ場合、そこからプレイが再開される。再開地点は通常拠点近くに設定する。中央首都の推奨レベルは一から十。そのため大半のプレイヤーは他の都市に変更しているはずである。しかし、コータ変更していなかった。単純に変更するの忘れていたからだ。
「さて、ここからコータ漁港までは遠いな……どうするかな」
コータは自分の開拓した漁港に自分の名前をつけていた。ただしキャラの名前は別である。
ふと、横を見ると女性転生者にまとわりついている四人のチンピラどもが居た。その女性転生者の装備はこの世界観とは場違いなセーラー服を来ていた。
――とは言え中身が女性とは限らないんだよな……
聞き耳を建てると「なぁ、ねーちゃん良いこととしようぜ。同じ転生仲間だろ」などと言って居る。「それとももう一度死んでみる?死んだら蘇るか実験してみる?」チンピラ共はナイフを取り出して舌なめずりしていた。
恐らく初心者専門のPKプレイヤーだろう。ゲーム風の世界とは言え、ここは異世界のはず。で、あれば街の中央でそんなことしていたら、衛兵が飛んできそうな気がする。多分、それに気がつかないお馬鹿さんだろうと思ったものの衛兵が駆けつけてくるには時間が掛かりそうだ。上手いこと死角を付いている。恐らくベテランPKプレイヤーだ。
「仕方無い……時間稼ぎぐらいはしてやろう……」
コータはイベントリの中からアイテムを取り出す。『ゲームで可能だった全ての操作』が使える以上インベントリもアイテムボックスも使える。
取り出したのは初心者用アイテム『救援煙玉』。叩き付けると発煙し近くから救援が駆けつけてくる代物だ。初心者向けお助けアイテムで、チュートリアルをクリアすると貰える初期装備である。レベル10に以降は、必要ないか役に経たないアイテムの代表だ。
『救援煙玉』を叩きつけると即座に十数人衛兵が駆けつけてきた。
「お前らそこで何をやっているんだ」
チンピラ共はたちまち衛兵に囲まれた。
「なんだよ、
チンピラ共が衛兵に気を取られている瞬間にコータは女性転生者の手を引っ張って駆け出す。
「今の隙に逃げます……」
手を握ると小さく柔らかい手の感触が伝わってくる。
(最後に女性の手を握ったのって……そんなの記憶に無いわ……)
手を握って全力疾走して大通りの方へ抜けると、そこで停止する。
「ここまで来れば追っては来ないでしょうけど、気を付けてください」
「ああ、助かりました。どうやっても一撃で全員、粉砕させてしまうのでどう手加減しようかと思っていたところでした……」
えっと……。
「ところでそのセーラー服は転生特典かなんかでしょうか?」
「いえいえ、これは『ドキドキ♡女子校生活』コラボイベントの時の景品です」
MEOは時々訳の分からないコラボイベントをする事があったがどうやらその時の景品らしかった。
「じゃあ、俺は田舎の方に行くので、この辺で立ち去りますね」
「エリカも行くあても無いので連れて言ってくれませんか?」
美少女の頼みは断って行けない(キリッ)な女性耐性皆無のコータ(35歳独身♂)は思わず頷いてしまった。
「ところで、おじさんの名前は?エリカは、エリカ・リリベールと申しますけど」
「俺はコータ・ハチマン。農民だ」
「農民と言うことはまったり勢ですか?それとも貴族狙い?」
「まったり勢、そちらは攻略勢?」
「エリカと呼んでよ。エリカの
コータは思案する。セーラー服を着る攻撃職と言うとシーフ系の女性上級職、例えばくノ一などとか考えるが恐らく違う……その時コータはひらめいた。
「エリカは
「あったりーーー。じゃあ、ご褒美上げるね。じゃあ目をつぶって……」
ご褒美……年齢イコール彼女いない歴なので中学生並みの妄想を膨らませて思わず前屈みになってしまいそうなコータ。
「はい、ご褒美の飴ちゃん♡」
……そういえば、どこかに甘い物を仕込んでいるんだよな……。職場でよく見たもん。一瞬、期待して損したと思ったコータだったが、飴ちゃんはおJK様から頂いたご褒美としてインベントリに祀るのだった。
「で、コータさん、これからどうするの?」
「そうだな貰った能力を確かめながら、馬車でコータ村まで移動しようかと……」
「コータさんの貰ったのは、どういう能力?」
「ゲーム内と同じことが出来る能力」
「それって普通じゃん?もっと凄い能力とか選べるんでしょ。エリカは、スローライフに憧れてたから生活系スキルを最大にしてもらったよ」
全然もったいなくはないんですけどね。
「それって、掃除、洗濯、料理なんでもござれってこと?」
「うん、そうかな♡」
北東の街に行く待合馬車が来るまでいくつかの能力の確認する事にした。四肢が不自由な人でもゲームが楽しめる様に公式が用意している思考操作拡張機能と言うものがある。これは脳波を検出して、キャラを操作できる代物だ。ただこの拡張機能は設定が誤動作が多く、一般ではあまり使われて居なかった。コータがしたのは、この拡張機能の動作確認だ。
「……問題無さそう」
コータは感触を確認する。しかし、35歳とJKは事案すぎるだろ。せめてアラフィフぐらいなら親子ですと開き直れるのに……。
しばらくすると天馬が引く馬車がやってくる。そこから三時間で北東の中心都市に到着する。そこから貸切馬車に乗り換え。更に一時間ほどでコータ村に到着。
「ここがコータ村だ」
村に到着すると、農作業していた農民達が手を止め物珍しいそうに集まってくる。MEOではこの農民はNPCだがこの世界では実在している人間だ。農民達が俺に向かって挨拶する。
「これはコータ村長、お早いお帰りで。こりゃべっぴんな嫁さんつれてけーってきたんだな」
「ちがう、ちがう、この人……」
しどろもどろにながら否定するコータ・ハチマン
(ゲーム内の変更がこちらにも反映されている様だ……)
「コータの家内(予定)のエリカです。皆様、今後お世話になります……ってのは冗談でして、お手伝いとして雇われて来ました」
……そのジョークはキツいよ。おっさんのMPがガリガリ削られていく。
「ただいま……」
うん、家の中には誰も居ないね。
「これがコータさんのおうちですか……」
エリカが物珍しそうに家の中を眺めている。まぁ、玄関を開けると部屋のど真ん中に囲炉裏がある19世紀の山村感丸出しで世界観ぶちこわしの建物だしな。取りあえず酒飲んでから寝る事にしよう。お米で出来たワインではなく白葡萄酒を一杯くいっと飲み干す。
……エリカちゃんを放置していました。
「行くことないなら、取りあえずおあがりよ」
玄関先で家の中を眺めていたエリカちゃんに声をかける。
「お邪魔しますね」
エリカちゃんが家の中に入る。部屋の中が女の子の甘酸っぱい匂いで充満する。くらくらしそう(酔っ払っていません)取りあえず、キモいおっさんの家なんかにとか言われなくて良かった……。
「空いている部屋があるからどこでも好きな部屋使って良いよ」
「じゃあ、コータさんと同じ部屋で」
「野獣に襲われたいのなら良いけど」
「べつに構いません」
エリカさんが、ぐいぐい来る。
「……勘弁してください」
逆に泣きをいれてしまった。女の子耐性0の草食系ですからそう来られる普通へたれますよ。ぐいぐい来られるとパニックよ(決して酔ってませんよ)
俺は、エリカを空き部屋に案内した後、囲炉裏の前でそのまま眠った様だ。朝の日差しで目を空けるとパチパチとなる囲炉裏の火の音で目が覚めた。
「あ、起こしてしまいましたか?揺すっても起きないので、取りあえず毛布かけておきましたが、冷えませんでしたか?」
(……なんて優しい娘なんだろ……旦那になる奴は幸せだろうな)
コータはお父さん気分になっていた。目をこするとエリカが、囲炉裏の火で何か炙っていた。
「小麦粉があったのでこねて、野菜とかお肉を詰めて焼いてみました」
いわゆるおやき的なものを即興で作ったらしい。野菜はとかはどうしたのかな?
「お野菜と肉は、先程、村民の方が精をつくモノをと差し入れを頂きました」
完全に勘違いされているじゃないか……。まぁ美味しかったけど。
それから一ヶ月経った、もちろんエリカとの間には何も無い。それは俺がへたれだから。しかしエリカが能力で貰ったという家事スキルは過ごすぎた。これではエリカ作った飯以外は食えなくなる。
——
それは俺が日課の釣りに出かけて居るときだった。MEOの釣りスキルは、高くても釣れる魚は運だ。先程から外道を連発して釣っていた。今日の釣りはこの程度にして置くか釣り道具をアイテムボックスに収容し、空のバケツを担いで帰る。
村の戻ると騒然としていた。先日、街の方に買い物に出かけていた村民の一人が街で聞きつけた噂話を話していた。魔王が復活したと言う噂を……。エリカに尋ねると。
「勇者と魔王は対になるもので、『魔王現れし時、勇者現る』と言うじゃない。多分、勇者になりたいっていった転生者とエリカは思うよ」
MEOにはそう言う設定があったなと思った。
「どうしますか村長?」
「取りあえず情報収集が優先だ。噂だけで慌てて行動するのだけは避けろ」
そこでコータとエリカは北東の街まで買い出しを兼ねた情報収集にでる。
聞き込みの結果、魔王復活の噂は、ここ一ヶ月ぐらいに現れたようだ。ちょうど俺達が転生したタイミングと一致する。すると転生者の中に勇者がおり、それに呼応して魔王が復活したと考えるのが無難だ。
魔王は西方の辺境にある魔王城に復活し、そこに居城を構えていると言う噂が流れていた。西方の辺境は北東の街からは1000km以上離れているので、コータ村にはあまり関係なさそうだ。
しかし、それはそれで村長として行う仕事がある。仮に魔王軍と帝国軍が激突する事態になれば恐らく商売に聡い商人が、先に噂をばら撒いて、パニック買いを誘発させ、高値で売りさばこうとする訳だ、その前に必要物資を買い込む必要がある。
コータが追加の買い出しに出かけた頃。エリカは冒険者ギルドで情報と交換に依頼を受けていた。それは近くの古戦場跡に住み着いた霜の巨人を退治すると言うもの。レベル120の
だが、エリカは夜までに戻ってこなかった。コータはギルドに掛け合うもなしのつぶてだった。探し人遠眼鏡と言う魔道具で古戦場跡の様子を遠くから覗いてみる。これはレンズに映り込んだ、指定した人物を自動探知してズームしてくれると言う代物だ。しかし、コータが古戦場跡で見たものは何も存在しない広い草原だ。
コータは何者かが空間丸ごと転移させた様な違和感を覚えた。そこでコータは全財産を持って冒険者ギルドに駆け込む。依頼はエリカの捜索。手がかりになる情報だけでも報酬を与えると言う破格の依頼だ。
全帝国土冒険者ギルドに依頼が告知され、情報が入ってくる。セーラー服に槍を担いだ女性が古戦場跡で相対していたと言う情報が最初に来た。その後の足取りに関しては不明だった。一週間すると帝国各地から魔王城に帝国各地の大量の魔物が転移されていると言う情報が入ってきた。
——
その情報を元に魔王の元に残った資金をつぎ込み竜を借りコータは飛んでいく。余っていたスキルポイント全部つぎ込んみ騎竜10した。騎竜10あれば北東の街から西の辺境にある魔王城まででも1時間弱で着く。
コータは竜の上で探し人遠眼鏡で魔王城の様子を覗く。そうするとエリカが魔王城の魔王の部屋の奥で捕らわれている姿が映し出された。コータは勇気を振り絞って、竜に騎竜すると一気に魔王城の広間に飛び降りる。
目の前では勇者と魔王が対峙している。コータはそこに割って入りそして魔王に対して叫ぶ。
「なぜ、エリカをさらった?」
「なんだ、この農民?いきなり来て何言っておる?」
「だから、エリカをさらったのはお前だろ」
「さらったのではなく保護したのだが」
「本人の同意がなければ人さらいだろうが」
転移魔法に巻き込まれて保護された可能性もある。だが、それは違うとコータの直感が叫んでいた。
「最大の暴力が保護するって言えば保護だろ」
魔王と農民が押し問答を始める。
「それより何故エリカをさらった。普通、さらうのは王女とか聖女だろ」
「……だってリリベールのエリカだぞ。それに比べれば王女や聖女なんか雑魚だよ。だから最初にとら……保護した。そして俺達の嫁するんだ」
俺達……?コータはその言い回しに違和感を感じる。
「そのリリベールのエリカって誰だよ」
「リリベールのエリカを知らないんだって……とんだ情弱じゃん。なんでこんなふがいないおっさんのところに居たのやら。おかげで探すのに苦労したわ」
そこで魔王と対峙していたはずの勇者が笑いながら言う。
「VRのアイドル、リリベール三人組のナンバーワン、エリカを知らないとは潜りだな……と言う訳だからおっっさんはさっさと帰れ」
魔王が言う。動画サイトを一切見ないのでそう言う事を知らないおっさんだった。
「……そう言う事は、勇者と魔王はグルってことか」
そう言いながらコータは思考操作拡張機能を起動し、脳内でとあるコマンドを叩き始めた。
「俺が勇者の能力を貰って、あいつが魔王の能力を貰って、世界を半分ずついただくって転生前に決めていたのよ。しかし、農民の癖に俺達に刃向かうとか頭おかしいのかな。ふざけるのもいい加減にしろ」
「ああ、とっとと処分しちまおう。それから世界征服しに行こうぜ」
「いくぜホーリー・アッターーーーーーーーク」
勇者がコータに向かって剣を振り下ろす。一撃で台風を消滅させてしまうぐらいの力を剣一振りにたたき込む聖属性の高レベル対人攻撃スキルだ。剣を振り下ろすと砂塵が巻き上げられて視界が隠れる。
「農民にはもったい無い一撃だ」
砂塵がゆるゆると舞い散り、徐々に視界が晴れるとそこには一歩も動いていないコータが何事もなく立っている。
「いや蚊ほどでもないな。勇者の一撃は……」
「そんなはずは無い」
「今度は俺にやらせろ。ダークネス・グラヴィティ・ホール」
魔王の声が響き渡ると暗闇の球体がコータを包む。ダークネス・グラヴィティ・ホールは闇属性の高位魔術。対象一体を闇の球体に包み込み重力で押しつぶすと言う魔法だ。
しかし、呪文が晴れるとコータは元の姿のままだ。
「農民のくせに……いやそう言う能力を貰ったのか。どんな攻撃を無効化する的なやつ」
「いやいや、そんなもの貰っていないですよ……」
「それならこの攻撃を防げる分けないだろ?」
「いや少しパラメータをいじらせて貰っただけだから。今の君たちアリより弱いから」
そう言いながらコータが息を吹きかけると勇者と魔王は遠くに飛んでいく。「おぼえてろー」と言うセリフが聞こえた気がする。
コータは『ゲームで可能だった全ての操作を転生後の世界でも実行可能にする』能力を行使したのだ。拡張機能のセキュリティホールを利用しシステム管理者権限でデータを改竄。現実の世界でこれをやったら一発でアカウント
そんなわけで、捕らわれているエリカを助け出した。エリカは囚われの部屋で丁重に持てなされていたらしく心身ともに問題なかった。魔王は律儀にテンプレ守っていたようだ。
コータはをエリカを連れ村に凱旋する。
「さすが、おらの村の村長だべ」
「嫁さん取り返してきただべか」
……などと言う声が聞こえてくる。
「子どもは三人欲しいな♡」
周りで村民がはやし立てる。
「エリカさん、そう言う冗談は……」
「本気だよ。コータさんって、MEOで一世を風靡した名プレイヤーの旋風の聖騎士さんでしょ」
「……なぜ、その黒歴史を……」
旋風の聖騎士は、メインキャラで名乗っていた二つ名だ。もう思い出したくない。
「すぐ分かりましたよ。口調や仕草のタイミングが癖がそっくりだもの。そのキャラに憧れて、戦乙女になって一緒に戦おうと思ってたの……転生の間で見つけたときこれは運命だと思いました」
スキルを使う時の癖で本人特定できるとか、いろいろと重い気がするのですが……。
「今度は離さないからね♡」
こうしてなし崩しにエリカとのスローライフが始まるのであった。
ゲーム系異世界に転生したので本物のチートと言うものを他の転生者に見せつけてからスローライフを楽しむことにします(短編版) みし @mi-si
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます