23日 【掌編】金の斧、銀の斧、泳げない女神
きんのおの、ぎんのおの、およげないめがみ
かぎろ/さく・え
むかしむかし、あるところに、正直者の木こりがすんでいました。
ある日、木こりは、まちがえて、森の中のみずうみに斧をおとしてしまいました。
一本しかない斧です。これがないと、こまります。
木こりは「かみさま、どうかおたすけください。」と、みずうみにむかって祈りました。
すると、みずうみの底から、金の斧を持っためがみさまが、今にも溺れそうになりながらあらわれました。
「ガボボボッ! あなたガボッ、おとしたのはゴボボッ、コボ金の斧ですガボッ!?」
「いいえ、それはわたしの斧ではありません。」
木こりは正直にこたえました。めがみさまは「ゴボッゴボボッ」と大量の水を飲み込んで苦しそうにみずうみの底にしずんでいきました。
しばらくすると、めがみさまは銀の斧を持って、もう一度あらわれました。
「あなボボッ、あな、あなたガバボおとしたのガボボボこの銀の斧ガボボブァッ!?」
「いいえ、それもわたしの斧ではありません。」
木こりは正直にこたえました。めがみさまは「ガバゴボボ」と苦しそうにみずうみの底へもどりました。そしてこんどは、鉄の斧をもってあらわれました。
「ガババが落ボしたボハァッこボボ鉄の斧でガボァッゴボ」
「はい、それはわたしがおとした斧でございます。」
するとめがみさまは鉄の斧と金の斧と銀の斧をとりだして、いいました。
「ガボボッガボボゴボッゴボッ、ゴボボブァッガブハッ、ゴボハァッッ」
正直者の木こりは、三つの斧がもらえて、おおよろこび。うれしそうに、おうちへかえっていきました。
めがみさまは、いのちからがら岸までたどりつき、水をしこたま吐きだしたあと、憔悴しきった顔でいいました。
「転職しよう」
おしまい
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