第5話

 次の日は早起きをして朝食を終えて。

 お父のお見送りをした後に、わたしは屋敷の西側にある書庫に向かった。


 一応はミニーノの記憶があるから大丈夫だとは思うけど。


 昨日お母様も『挨拶はちゃんとしなさい』と、言っていたし、もしもの為にと礼儀の本を書庫で探すことにした。

 さっそく書庫の本棚で礼儀の本を何冊か見つけて、机の上に本を広げ見よう見まねで会釈の練習を始めた。


「スカートの端と端を摘んで、膝を曲げるのね」


 目の前にセルバード王子がいるとして


「誕生日おめでとうございますセルバード王子。今日は王子のお誕生日会にお呼び頂きありがとうございます」


(これを…噛まずに笑顔で、セルバード王子に言うのね)


 書庫で一人、何度か挨拶と会釈の練習をしてみた。


(なんて完璧なの…流石はわたし!)


 自画自賛をして出したばかりの礼儀の本を本棚にしまった。


 書庫に来たのにはもう一つの理由があるから。


 昨日お父様の魔法を感じて思いたした。

『魔恋』乙女ゲームのタイトルにあるように、わたしにも魔法が使える。


 ファンタジーゲームも好きな、わたしにとっては魔法と聞いただけで、ウキウキ、ワクワクが止まらない。

 なといっても魔法だもの。

 使えたら、絶対にかっこいい!


 乙女ゲームの後半には学園の授業のほか、ミニーノも魔法を使っていたし、絶対に後々絶対に自分の役に立つわ。


 わたしにも読めそうな魔法の本を探しに探して。

 それらしい本を手に取った。

 背表紙には【良い子の魔法】と書いてあったからだ。

 それをさっそく近くの机に着き本をめくった。そこには鎧を着て、剣を持った男の子の絵が描いてあった。


『僕は冒険者だ! ハンターギルドで依頼を受けて、ダンジョンでモンスターを倒して、魔石を手に入れるぞ!』


(冒険者に、ハンターギルドに、モンスター! まさに、ファンタジーの世界!)


 ハンターギルドで冒険者が依頼を受けて、ダンジョンでモンスターを倒すと『魔石』という石が手に入るんだ。

ペラッ

『僕がモンスターを倒して集めた魔石はね。一旦シュタイン国にある、一番大きなハンターギルドが回収するんだ』 


 シュタイン国はわたしのいるロベルト国の東側の国か。


ペラッ

『シュタイン国から、魔法大国クエルノ国に魔石は集められて、その国の魔術師たちが錬成をして、魔法を使う為に必要な魔晶石に変えるんだ』


 魔法を使う時には『魔晶石』という、石が必要なんだ。それを作るのが、一番大きな国、魔法大国クエルノ。


『魔晶石にはね。いろんな属性があるんだよ。火水風雷土の五属性の色に分かれているんだ』


 魔晶石の色で違うのだったら赤は火属性の魔法かな?


『魔法や魔晶石を扱うには、各諸国の魔法学園での卒業許可証が必要になるよ』


(学園の卒業許可書?)


 そうなると、わたしはまだ学園には入れないから。

 まだ、魔法を使う事はできないのか残念。

 少しがっかりして最後のページをめくった。


「ん? あれっ、ここに何か書いてある」


 クエルノ大国ではいろんな魔法の家財道具が作られていて。

 各諸国の貴族の間では大人気。

 調理場やお風呂などあらゆる所で使用されている。


 それなら家にもあるはずよ。

 だってわたしは貴族だもの。

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