第3話

 自分がミニーノだと気付いてから三日目の朝を迎えた。


「ううーんっ、よく寝た」


 セルバード王子と誕生日会のことを考え過ぎて、心配で夜は眠むれないかと思ったのだけど。

 わたしって案外図太いのか、ベッドに入ると直ぐにぐっすりと眠れた。睡眠不足にもならなかったし食欲もある。

 コンコンと部屋の扉をノックに返事を返すと。

 部屋の扉が開きレーラが水の入ったボールとタオルを持っ来た。


「おはようございます。ミニーノお嬢様」

「おはようレーラ」


 水の入ったボールとタオルをベッドの脇に置き。

 レーラが部屋のカーテンと窓を開けた途端に、庭のバラの香りと朝の冷たい空気を頬に感じた。


「風が気持ちいい、今日もいいお天気ね」


 カーテンを紐で束ねながらレーラさんは微笑む。


「そうですねお洗濯日和です。ミニーノお嬢様はお外に出られるのでしたら、朝食の後になさってくださいね。さあっ、朝の身支度をいたしましょう」

「はーい」

「こちらにお座りください、ミニーノお嬢様」


 レーラさんに誘導されドレッサーの前に座ると、櫛で髪の毛を優しく毛先からといてくれる。


「お嬢様、今日の髪型はどうなさりますか?」


 髪型か、慣れ親しんでいた後ろで一つ結びではなく、憧れの髪型。


「ポニーテールがいいかな」

「はい、かしこまりました」


 本当は未婚の場合は髪を下ろすのだけど。

 お父様の方針は出来ることは自分でやって見ること。

 自分の部屋を掃除していてもなにも言われない。


(だから動きやすい髪型がいい)


 常に考えて行動しなさいと言われているし。

 お父様も忙しい時期にしか執事を雇わない。

 メイドも三人だし、調理を作る人はお祖父様のころから雇っている、コックさんではなく、スタさんとサラさん、コーダの一家。


 ここで問題。ミニーノはわがままお嬢様ではない。

 ゲームの雑誌で見た十五歳ミニーノって、いかにも意地悪なお嬢様って感じなイラストだったし、胸も大きくスタイルは抜群だった。 


 鏡に映る九歳のわたしはふんわり可愛い感じに見える。

 どこかで転機が訪れて性格が変わるのかな。


 まさか王子との婚約で変わるのかな?


 身支度を終えて食堂に行くと今日は起きる時間が遅かったようで、すでにお父様は仕事に出勤していて、お母様も朝食を終えて部屋でくつろいでいると教えてくれた。


 食堂のテーブルに自分用に用意された。

 朝食のサンドイッチと野菜スープを美味しくお腹に収めて庭に出た。

 いままでのわたしはこの大きな木の木陰で読書が好きだった。

 でも今のわたしは違うこの木に登って上から眺めてみたい。

 

 雑誌やゲームの説明では緑豊かな国と書かれて、イラストが数枚載っているだけだった。


 ゲームもそれだけで記憶を思い出す前の、ミニーノだって木の上からは見た事ないだろう。

 記憶を思い出したミニーノは知りたい。


 必死に木につかまって登って、立てそうな幹に立ち目を開け辺り見た。


「綺麗……」


 雑誌に書いてあった通り本当に緑豊かだ。近くに大きな森や木々も見える。

 大きなレンガ調の屋敷に小さな屋敷が等間隔に並んで立っていた。

 あそこに見えるのは村かなそれとも町?

 知らなかったお隣さんまで行くのには遠く、屋敷の周りには畑ばかりなんだ。


 しばらくこの世界の景色を楽しんだ。

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