第2話


「ミニーノお嬢様」

「ありがと」

 

 メイドのレーラから朝のタオルを受け取り、顔を拭いたその後は身支度を整えて両親が待つ食堂に移動した。


「お父様、お母様おはようございます」


「ミニーノおはよう」

「おはよう、ミニーノ」


 わたしのお父様、グランス・カッツェ国の宰相。

 国の総理大臣。毎朝早くから夜遅くまで王城でお仕事をしている。

 お母様、シルエラ・カッツェお母様は体か弱く空気の良い、のどかなこの地に移り住んだ。お母様は屋敷で本や刺繍を嗜んでいる。

 

 そのお母様が食事の手を止めた。


「そうだわ、ミニーノに伝えることがあったの、食事の後で部屋にいらっしゃい」

「はい、お母様」


(まさか、お母様は何か気が付いた?)


 いつもの雰囲気が違うとか。

 いつものミニーノと挨拶の角度が違うとか、そんな細かなことを言わない……わよね。

 でも、昔の記憶が蘇って若干お嬢様らしくなくなってしまったのかしら。


 朝食後、王城へお仕事に向かわれるお父様をお見送りした後。

 ドキドキしながら、言われた通りお母様の部屋に訪れて扉をノックした。


「お母様、ミニーノです」


「ミニーノ、入りなさい」

「はい、失礼しますお母様」


 お母様の部屋は薄い緑色と白で統一されていた。

 部屋に入ると直ぐにお母様はわたしに白い封筒を手渡した。


「お母様。この封筒は何ですか?」

「それはね。今日から約一週間後に行われるセルバード王子の誕生日会の招待状が入った封筒です。何故か急に我が家にも届きました」


「王子の誕生日会の招待状?」


 貰った封筒をよく見るとウラ側には、王家の紋章が入った封蝋が押されていた。これは紛れもなく本物だろう。

 しかし記憶を辿っても六歳から三年の間、セルバード王子の誕生日会にわたしは呼ばれていない。


(なぜ、今になって王子はわたしを呼ぼうと思ったの)


「あなたもセルバード王子も同じ九歳ですものね。そろそろ婚約者候補をお決めになる時期かしら? 他の貴族の令嬢を呼ぶだけではなく、この国の宰相をなさる旦那様の令嬢『ミニーノ嬢も呼びなさい』と、周りの方に言われたのかもしれませんね」


 そうなるとこの誕生日会の後で、ゲーム通りならわたしはセルバード王子の婚約者に選ばれるのかな。


「ミニーノ、久しぶりのセルバード王子の誕生日会です。しっかり挨拶だけはするのですよ」

「はい、お母様」


 話はそれだけで終わりで。

 わたしはその足で外に出て、お気に入りの庭の大きな木の下に座り、お母様から渡された誕生日会の真っ白な封筒を見ていた。


(王子に会えるのか)


 ゲームではスチルのみで、子供の頃のセルバード王子に会えるのは正直嬉しい。

 彼は子供の頃からイケメンだった。

 

 楽しみだね。

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