40配信目 魔王様3D
我は今日、キラキライブの本社に来ている。
先日の真根さんとのチャットでキラキラフェスティバルへの出演を了承してからすぐ、真根さんから3Dを試してみて欲しいという依頼があった。
そういえば我、3Dモデルないけどどうするのかな?と思っていたが、どうやら魔王、勇者、天使の異世界3人組の3Dモデルは水面下で製作中だったらしい。今回のキラキラフェスティバルの話が持ち上がったので、じゃあそこで3人のお披露目もやりましょうという話になったとのこと。
ちなみに、今日は我、テレポートでキラキライブ本社に来ているわけではない。
なんと、電車とバスという公共交通機関を使ったのだ!
ふっふっふ。
さすが我。
成長が著しすぎてびっくりじゃ。
キラキラフェスティバルなんていう大きなイベントに出演するのだ。
これくらい出来なくてはいけないからな。
……まあ、かなりしんどかったのは内緒じゃな。
そもそも電車の切符の買い方とかすっかり忘れていたからのぅ……
困っている我を見かねた駅員さんが教えてくれて事なきを得たが。心優しき駅員さん、ありがとう。挙動不審な我を助けてくれて。
「よし」
頬を軽く叩いて気合を入れる。
さあ、キラキライブ本社の受付に突撃じゃ。
「あ、あの。ニーナ・ナナウルムですけど、あの、その、3Dモデルの件でき、来ました…!」
「あらニーナ様…じゃなくて、ニーナさんですね。ふふっ。お久し振りです。
今日は3Dモデルの試着でしたね。真根さんから聞いています。ではこちらの名札をつけて801室までお願いします。
……お一人で行けそうですか? なんでしたら私も一緒に……」
「い、いえ。大丈夫、なのじゃです。わ、我も成長しているので…!」
キラキライブ本社の受付で許可証をもらって、801室まで向かう。
本当はキラキライブ本社にあまり来たことないし、一緒に来てほしいけれど、ここは我慢じゃ。我だってもう一人前のライバーなのじゃからな!
ビクビクしながらも、なんとか8階まで向かう。
途中すれ違う人たちが心配そうにこちらを見てきた気もしなくもないが、きっと気のせいじゃろう。むしろ我が魅力的すぎてこちらに目を奪われているだけな気がする。うん、絶対そうじゃな。
「ここ、か」
コンコンコンと3回ノックして、部屋へ入る。
「あ! ニーナさん! よかったぁ~! 心配してずっと携帯握りしめてましたけど、杞憂でしたね」
部屋へ入るやいなや、真根さんがこちらへ寄ってきて声をかけてくれた。
「お、来たなニーナ。迷子の案内放送がかかるんじゃないかと心配してたぜ?」
「こんにちは~、ニーナちゃん。オフコラボ以来ね~」
真根さんの後ろにはレイとリリィも居た。
今日は二人の3Dモデルの試着もある。オフコラボ以降、二人とはちょっとだけ距離が近くなった気がするし、居てくれるのはすごく安心する。
ま、まあ、我の昨今のコミュ力レベルの上がり方を考えれば、二人が居なくてもよゆーじゃけれどな!
「それじゃ早速やっていきましょうか!
とりあえず、お三方にはまず、3Dモデルを見てもらいますね」
そう言って真根さんは男性のスタッフに指示を出す。
カタカタカタというキーボードの小気味よい音がなると、部屋に設置されている大きなモニターに3人のモデルが映し出される。
それぞれが2Dのイラストをそのまま3Dに落とし込んだかような、綺麗なアニメグラフィック。素人目に見ても相当手のこんだ3Dモデルだということが分かる。
「おお! 凄いな」
「ほんとうね~、かわいいわ~」
「う、うむ」
「ふふふ。そうでしょうそうでしょう? 私が監修しつつ、私の1年後輩の彼のチームが腕によりをかけて作ってくれましたからね!」
真根さんがそう言うと、後ろの眼鏡の男性スタッフがより一層ドヤ顔をする。
「それじゃあ、早速試着してみましょうか。
モーションキャプチャには、マーカーの付いたこの専用の服をきてもらいます。アチラに更衣室がありますので、着替えてきてくださいね」
渡されたのは全身真っ黒のスーツ。
関節部などにマーカーが付いた、一見するとウェットスーツのような服。
これを着ることによって、機材を通じて3Dモデルに動きを反映させるわけじゃな。
更衣室へ行き、早速着替える。
うむ、服のサイズも結構ジャストじゃ。
真根さん、いい仕事するではないか。
レイやリリィも隣でキャプチャスーツに着替えているが、このスーツはある程度体にピッタリした服だ。まあ、つまり、体のラインが結構出るわけで……
「チッ…」
我は思わず小さく舌打ちをする。
どうして我の周りは胸が大きいやつしかおらんのじゃ。
まあ別にいいけどね?
人は見かけじゃなくて中身だし? 我って大人の魅力の権化的なとこあるし?
「さて、じゃあ早速やってみましょうか」
そんなことを頭の片隅で考えていると、スタッフたちがあれやこれやとテキパキ準備をすすめる。
機器に囲まれながら、スタッフさんたちからの指示を待つ。
スタッフさんたちがいそいそとパソコンとにらめっこしながらしばらく調整をしてくれると、3Dモデルに我の動きが反映された。
「おお……!」
これは凄いな。
若干動きにノイズが乗っているが、リアルタイムに動いておる。
「おおすげ」
「すごいわ~」
レイもリリィも興奮気味だ。
「じゃああとはお三方に動きのサンプルをいくつか頂いて、こちらで調整しますので、もう少々お願いしますね」
3Dモデルを持つVtuberは、『視聴者』としては何度も観ているが、こうして自分がなると感慨深いものがあるのぉ。
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