第19話
数日後——倉庫の前に式馬は居た。
「ここが約束の地点か……」
携帯で指定された住所を確認する。
この地域はモンスターの進出によって放棄されているはずだ。ここに来れるだけの相手となると、それなりの実力者なのだろう。
今度こそ本物だといいが。
戸を開く。中は薄暗く、ラップ巻きされたケースが山積みにされていて視界の通りが悪い。
カツカツと奥から男が現れた。
「ホンマに来てくれるとは思わんかったわ。テスターのシキマさん」
「aaaaさんでいいんだよな?」
「しょうもない偽名で申し訳ないわ。捨て垢やし許してや。テスター同士、仲良くしよな」
テレビで報道されてから数日、式馬の元には三種類のメッセージが届くようになった。
最も多い、テレビのコメンテーターに感化された批判。その次に擁護と感謝のメッセージ。
最後は目の前の男のような、テスターを名乗るメッセージだ。
「一つ聞きたい」
そのメッセージが来るごとに式馬は会いに行っていた。だが、相手が本当にテスターだったことは一度もない。
これは確認だ。
「一番下のステータスはなんだった?」
「……何言うてんの。『素早さ』やろ」
テスターであれば、消されてしまった『幸運』のステータスと答えるはずだ。それ知らないのならこの男もテスターを語る偽物だということだ。
「帰る。偽物に用はない」
「あれぇ。なんでバレたん。今の秘密の合言葉やったん? バレたんやったらもうええわ。出てきい」
「やっぱりこうなるのか……」
影から伏兵が現れる。バットや投げ物の他に、スタンガンを持っている人もいた。
「なあ、次のアップデート内容をどうやって知ったんか教えてくれんか? 痛い目見たくないやろ?」
テスターを名乗るような偽物たちは、どうしてこうもリンチが好きなのだろう。
「はぁ……運が悪い」
「……ええわ。一旦ボコしとこ。お前が痛ぁて泣き出したらもっかい聞いたるわ」
伏兵たちが一斉に襲いかかってくる。今日の式馬の運は絶不調。
その分、補填される『幸運』も大きい。
式馬を狙ったバットが他の男の顔面に当たる。もう1人の男は隣にずっこけて周りごと将棋倒しだ。
その隙に攻撃を加える。気を抜くとクリティカルで骨を折りそうになるから、運が暴発しないようにコントロールする。
あっという間に4人を倒した。
「さすがテスターやな。でも、うちは簡単には倒せへんで」
偽物の男は二段積みされたケースを掴むと、片手で持ち上げた。
「どうや。うちの『力強さ』は10もあんねん! テスターやから言うてどうにもならんやろ?」
「ああ、そうかもな。だがこっちも1人じゃないんでね」
男の後ろからバハムートが現れた。首を手刀で落とす。
「うぎゅっ……」
男は自分で持ち上げたケースに潰れ、気絶してしまった。
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