第18話
式馬が目覚めた。
ソファに寝転び、毛布がかかっている。見知らぬ家だと思ったが、すぐにバハムートの実家であることを思い出した。
「いつの間にか寝てたのか……」
夕食兼朝食のパンを食べながら、SNSのモンスター情報を更新していたところまでは覚えている。
バハムートは帰ってくるなりシャワーに行ってしまって、人の家で勝手に動き回るわけにもいかず待っていたら眠気が襲ってきたのだ。
壁掛け時計は12時を指している。朝投稿したはずのSNSは、多くの反応が帰ってきていた。
「起きましたか……?」
「うおっ! びっくりした。居たのかバハムート」
「ふふっ、目が冴えたんじゃないですか」
制服に着替え直したバハムートが、背後のドアに立っていた。2人分のお茶を用意し、ソファの角に腰を下ろす。
「完全に遅刻です。わ、悪い子になっちゃいました」
「そうか、今日はまだ平日だったか。連れ回して悪かったな」
「冗談です。休みの連絡が来てました。取り壊し予定の旧校舎に、モンスターが湧いてるらしいんですよ」
バハムートはテレビをつけた。
どのチャンネルもモンスターとステータスのことばかり。死者は1万人以上だという。
人のいないところに出現するモンスターの特性上、都会より田舎などの人口密度の低い場所で大量発生しているらしい。
「ひ、ひどいです……」
SNSにあげられた動画のループ再生を背景に、アナウンサーが原稿を読み上げる。
『……また、アップデート以前にモンスターの存在を予言していたテスターと名乗るアカウントが……』
「俺のことだ!」
「これは……まずいかもしれません……」
コメンテーターが映ると、深刻そうな顔して話し始めた。
『……これは、許せませんねえ。事実なのだとしたら、承認欲求を満たすために利用したと言うことでしょう? 事前に起こることを知っていたというのに、ネタにするだけで何もしなかった。そのせいで1万人以上の死者が出ているわけですから……』
画面が遠くなったような気がした。
この人は何を言っているのだろう。式馬はできる限りの行動をした。連絡先を持っている人には直接送ったし、SNSでも匿名掲示板でもモンスターのことは投稿していた。
信じてもらえないことはわかっていても、警察とテレビ局にも同様の内容を送っていたのに。
開きっぱなしだったSNSに、リアルタイムで返信が来る。その多くがコメンテーターに感化された、ひどい内容のものだった。
バハムートがテレビを消す。
賢者は知を欲し、愚者は知を妬む。式馬は裏切られたような気分になった。
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