第15話
「バハムートはもう帰れ」
「ど、どうしてですか」
「女の子には遅い時間だ。これ、返すぞ」
式馬は魚マスクを渡す。バハムートは隠れた目でそれをじっと見つめると、頭に被った。
変身したみたいにポーズをつけるが、魚ヘッドはヒーローとは程遠い。
「我はまだ戦えるぞ!」
「親御さんが心配するんじゃないのか?」
「親は関係ない。我はバハムートぞ。我の意思は我が決める!」
バハムートは高らかに宣言する。そう言われてしまうと式馬には止めることができなかった。
「それじゃ頼む。……やつらは永遠と湧いてくるみたいだしな」
今度は裏路地だった。ゴブリンが獲物を見つけてニヤついている。
「松明置いたら湧かなくなりませんか?」
「それで止まれば便利なんだが……おそらくは人気のない場所が発生源なんだろ」
式馬はモンスターがいる場所の法則性を見つけていた。
人気のない場所——正確には人が長時間踏み入れていなかった場所。それがモンスターの湧く条件だ。
人がいない場所にモンスターが生まれるおかげで、現状では人とエンカウントする確率は低く、式馬のようにわざわざ会いにいかなければ襲われない。
だがずっと留まってくれるわけではなく、モンスターはさまよい歩く。
時間が過ぎれば過ぎるほど被害者は増えていくだろうと式馬は考えていた。
だから今のうちに狩れるだけ狩っておく。いつリポップするかわからないが、そのために深夜まで式馬は戦闘を行なっていた。
「アプデが来るまで、モンスターの大群がどこから攻めてくるのだと思ってました」
「それだったら人類はもう滅んでただろうな」
世界をアップデートしてる存在は、人類に滅んで欲しいと思っているわけではないらしい。
過去のアップデート内容を見ても、人が絶滅しない程度の『イベント』しか起きていない。
「それか……ここが単に偶然生き残った世界ってだけか」
「こ、怖いこと言わないでください!」
バハムートがぶるっと震える。
「そうだとしても、生き残れるように頑張るしかないんだ。俺たちは」
2人のモンスター討伐は、朝日が登るまで続いた。
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