第14話
顔の横を火球がかすめる。
当事者の式馬は平気な顔をしているが、後ろで見ていたバハムートの方が「ひぅ」と驚いていた。
「遠距離は当たんねえよ。心配すんな」
式馬は駐車場に漂うエレメントを見た。
エレメントはレベルが9の頃に戦わされたモンスターだ。
特化ステータスはおそらく『賢さ』。存在を構成する元素の魔法を放つ攻撃をしてくるが、命中判定に幸運が適応される式馬にとって当たることはほぼない。
「で、でも攻撃できないじゃないですか」
バハムートの言う通り、目の前のエレメントは火そのものだ。
遠距離攻撃は当たらなくとも、式馬から攻撃しようものなら火に腕を突っ込むのと同じ。テストではダメージの避けられない相手だった。
「それなんだが……おつかい頼まれてくれないか?」
「ぱ、パシリっすか。焼きそばパンっすか」
「ちげえよ。水を買ってきてくれ」
ポケットから取り出した財布をそのままバハムートに投げ渡す。
「ひゃっす……買ってきやした」
しゅぱっとマジックのように水と財布が渡される。パシられ力が高すぎるバハムートに式馬は面食らった。素早さ特化とパシリは相性が良すぎるのかもしれない。
「サンキュ。こっちはドームと違って、武器になるものがあるからな。楽勝だ」
自販機で買ったペットボトルの蓋を開け、エレメントに投擲する。
回転しながらエレメントへと水をばら撒く。構成する火とペットボトルの水がぶつかると水蒸気へ変換される。
球体の火だったエレメントが欠けた。沸騰する音が叫び声のように聞こえる。
「エレメントが……あ、あんな一瞬で」
「バハムート、すまんがもう一本いいか?」
「ひゃっす。買ってきやした」
「やっぱ早えーな」
式馬は念入りにファイアエレメントを消化すると、残りの水を口に含む。バハムートにも渡すと、彼女は顔を真っ赤にして震えた。
「しかし疲れるな。ドームでは何戦でも戦えたのに」
「あのときは、疲れもリセットされてましたから」
「連戦できねえから、レベル上げが大変そうだ」
式馬は携帯を確認すると通信が復旧しており、緊急連絡でモンスター関連のことが通知されていた。
外には出ず、モンスターと戦わないようにと何度も警告が送られている。
「だから人がいないのか」
「そ、それよりも夜遅いからだと思います……」
見上げるとすっかり星が出ていた。日暮れから長いこと街中を走り回って戦っていたのだ。
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