第10話

「それにしても次のアプデはいつなんだろうな」


『お知らせ』には日付が書いていない。どれくらいの頻度でアップデートが行われているかを調べる方法は現状存在しない。


数秒後か、明日か、一ヶ月後か。『モンスター』と『ステータス』という世界を大きく変えるアップデートが何時来るのか、誰にもわからないのだ。


「み、水と食料は準備したか?」


「ああ。十分に」


有道とご飯を食べた日の後に、世界が終わっても数週間生きられるくらいの食料は確保した。


通販でも頼んでいたから、式馬の部屋は水と食料でぱんぱんである。


だから式馬自体は何時アップデートが来ても対応できるくらいの備えはあるのだが、不安に思っていることがあった。


「他の人はちゃんと準備してんのかな」


「……普通はしてないのではないか?」


「やっぱそうだよな。メッセージ送れるやつ全員にモンスターのこと連絡したんだが、半分くらいはブロックされたし」


「ひうっ……行動力のバケモノ……」


バハムートが驚いて素に戻っていた。


ブロックしなかったもう半分も、式馬のことを馬鹿にするかネットで晒し上げるかして真面目に取り合ってくれた人などいなかった。


初めてのアップデートから一週間近く経っている今、式馬の評価はアップデートで頭のおかしくなったヤバいやつである。


「き、貴様に恥はないのか!」


「俺が言わないで誰かが死ぬよりマシだろ」


「うっ……」


テストから帰ってきてこれまでの間、自分のことしか考えていなかったバハムートは魚の目を泳がせた。


そんないたたまれない空気の中、脳内に声が響いた。


『世界がアップデートされました』


2人は顔を見合わせる。


「「メニュー!」」


——————————

*お知らせ

 ステータス


『アップデート情報』

『アップデート情報』

『アップデート情報』……

——————————


メニューに『ステータス』が戻っている。式馬はお知らせの一番上にある『アップデート情報』を押した。


——————————

*アップデート情報


モンスター

ステータス

を追加

——————————


やはりテスターの時と同じものだ。


遅れていた日が来てしまった。だが他のテスターと一緒にいる時にアップデートが来たのは幸運と言える。ソロプレイよりパーティの方が死ぬ確率は低くなるからだ。


すでにレベルが上がっているテスターなら尚更。


式馬はステータスを開く。


——————————

 お知らせ

*ステータス


レベル12

力強さ:0

体力:0

賢さ:0

精神:0

素早さ:0

SP:0

——————————


「『幸運』がない……!?」


式馬のステータスからは『幸運』が消滅していた。

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