第7話

「本日はどう言った内容ですか?」


「えっと……ちょっと頭がおかしくなったような気がして」


はははと笑いながら言うとお医者先生の眉間のシワが増えた。


「メニューとアナウンスの件ですか?」


「そうなんですけど……」


有道の言う通りに病院には来てみたけれど、なんと説明すればいいのだろうか。モンスターと丸2日戦ったんですと言っても、真面目に取り合ってはくれないだろう。


「皆さんも初めての現象ですから、不安なのもわかります。あの現象が起きてから寝れなくなったとおっしゃられる方も増えました」


「俺も2日くらい寝れなかったんですけど……」


テストのせいなんですと言うべきか悩んでいる間に、お医者先生は入眠用の薬を準備している。


どうせ信じてくれないのなら、いっそのこと本当のことを全部話す方がいいのかもしれない。話せば多少はすっきりするだろうし。


「実はテスターってやつに参加したら、ドームに連れてかれたんです。そこで何回もモンスターに戦わされて……」


「ふむ?」


「夢なのかもしれないと思ったんですけど、2日間も寝ていたことになりますし、変だなって」


先生がパソコンのタイピングを止め、訝しそうに言った。


「それはゴブリンやゴーレムといったモンスターですかな?」


「そうです! どうして先生がそのことを?」


先生もテスターなのかと思ったが、先生が怪しげに俺をみているので違う理由であることを察した。


「同じようなことをおっしゃった患者さんが居まして……。示し合わせたわけではありませんね?」


「示し合わせてなんかいませんよ。それより俺の他にも居るんですか! きっと俺と同じテスターなんです。その人のことを教えてください!」


世界に7人しかいないテスターがこの街に。


しかも同じ病院に来ていたなんて奇跡だ。SNSなどで発言してる人がいないか探してはいたが、見つけられないでいたのに。


お医者先生は厳しい顔で首を振った。


「患者さんの情報をお教えすることはできません」


「そんなぁ」


それから何回も頼み込んでみたが、先生が口を割ることはなかった。


「運が悪いなぁ……」


結局眠りやすくする薬を出してもらい診察室から追い出された俺は、お会計に呼ばれるまで待合室のソファで意気消沈しながら座っていた。


ぴろんと音が鳴る。俺のスマホのようだ。


バハムートさんから返信が来ました:貴様は選ばれし人間——テスターか?


「来た!」


思わず立ち上がってしまった。周りの人に変な目で見られるが気にしてられない。


SNSでモンスターの情報を更新していたのだ。多くの人の目に留まればそれでいいと思っていたが、テスターから返信が来るとは想像していなかった。


「えーっと、そうです。テスターです……と」


「やっぱり本物なんですね!」


何故か目の前に座っていた女子高生が、叫びながら立ち上がっていた。

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