第6話

「マジなんだって! 次はモンスターが追加されるんだよ」


「わかったわかった。何度も殺されたんだろ?」


「そう。普通にやっても勝てねえから最初は奇襲するしかねえ」


テーブルの向かいに座っている友人の有道は、冷めかけてる昼食をつつきながらため息を吐いた。


「……もし式馬がヤバい宗教とかエセ科学にハマったら、殴ってでも止めるくらいの気概はあったんだがなぁ。まさかモンスターにテスターなんて予想できねえよ」


「信じてねえな!?」


ドームから現実に戻り12時間眠った式馬は空腹で倒れそうだったので、ご飯を食べるついでに有道を呼び、これから起こることを説明していたのだが。


「信じるよりも心配が勝つだろ。ゲームのやりすぎじゃねえの?」


「マジなんだけどなぁ」


「マジで言ってんなら余計に心配だわ」


仮に式馬が普通の人で、有道が急にモンスターやらステータスと言い始めたらすぐに病院を紹介するだろう。


それがわかっているから式馬も強くは言えない。


「2日も音沙汰がなかっただろ。あの耳障りな声にビビって、頭でもぶつけたんじゃねえのか。そのステータスってやつは『メニュー』にも残ってないんだろ」


「一切ない。そう言われるとあれが悪夢に思えてきた……」


「だろ? とりあえず一度検査してもらえ」


「わかったよ」


あの自分の肉が潰され骨が折れる感触も、全ては夢だったのだろうか。証明してくれるものは何もない。


本当にテスターが居たとしても世界に7人だけなのだ。同志を探すのは困難だろう。


「ただ……」


有道がご飯を食べる手を止め、神妙な面持ちで言った。


「本当にそんなことが起こるなら、沢山死ぬだろうな」


リセットできた式馬でも9回死んだのだ。リセットできない現実なら、さらに多くの人が死ぬだろう。


10回で1回生き残るなら、単純に考えて全人類が10分の1になる。


式馬はぞっとして店内を見回した。昼時を少し離れているから店内はまばらで、店員を入れて丁度10人くらい。ならばこの中で生き残れるのは式馬だけだ。そして救えるのも式馬だけ。


式馬はヤケクソ気味に残っていた昼食をかきこんだ。


「ご馳走様です……よし、決めた!」


「なんだ急に」


「みんなが死なないように、モンスターの情報を発信する。弱点とか倒し方をまとめれば、倒せるようになるだろ?」


死んでしまう10分の9を式馬が埋め合わせる。そうすれば死ぬ人は少なくなる。


「式馬……そこまで本気なのか」


「最初からマジだって言ってるだろ」


「なら信じるしかねえか。俺も次のアプデまでに準備しておく。……ただ病院はちゃんと行けよ」


「わかってるって」

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