第5話

真っ黒い闇に包まれて式馬は現実へと帰ってきた。


途中だったゲームはつけっぱなし。部屋の空気は淀んでいた。


「終わったのか……?」


あれからゴブリンが3体同時に現れるようになり、それを倒した後は『体力』の高いゴーレムと戦わされた。


ステータスにある6つの項目にそったモンスターとそれぞれ戦わせられ、最後の『幸運』が高いフェアリーを倒す頃にはレベルが12になっていた。


身体はどれだけ疲れてもリセットされるが、精神的な疲労は抜けない。時計を見てみれば2日も経っていた。


「2日も戦い続けてたのかよ」


睡眠も食事も取らず永遠と戦っていた。式馬はベッドに倒れ込むと、蕩けそうになる目でメニューを開いた。


——————————

*お知らせ


『アップデート情報』

『アップデート情報』

『アップデート情報』……

——————————


「消えてる……?」


ステータスがなくなっていた。お知らせにあった『テスト情報』も消されている。


「あれだけ頑張ったのに、全部無駄だったのかよ」


死にながら上げたステータスが意味ないことに絶望しながら、式馬は気絶するように眠りについた。








アップデートされてから式馬がテストプレイしていた2日間。


世界は案外変わらなかった。


賢い人たちが頑張って世界の謎を解明しようとしているけれど、2日足らずじゃなにもできていない。


現状判明しているのはアップデートを繰り返すことで現在の姿になったということくらい。


初めは小さな箱庭しかなく、そこに人間が作られた。そこから果物とか性別とか他の生き物がアップデートされ、海ができて大陸ができて、地球は平面から丸いということになり、宇宙ができて素粒子ができた。


人類が見ていたのはアップデートの結果でしかない。


賢そうな人たちがテレビで「お知らせにあるアップデート情報は本当か」なんてことを議論しているから、多くの人は未だにこの超常現象を受け入れられていない。


受け入れている人たちは「神を倒せ」とか「私が神だ」なんて言っている変な人だから、受け入れない人たちの方が正しいのかもしれない。


普通の人たちは普通に生活していた。


結局、水槽から出れない魚はその水槽で生きるしかないのだ。


テスターとなり次のアップデート内容を知ってしまった式馬は、変な人の方に分類されるのだろう。


眠っている式馬には、まだ関係のないことである。

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