第2話

式馬はドームの中にいた。


光源はどこにもないのにドーム内は明るく、大きさが掴めない。少なくとも十分に走り回れる広さはあるようだ。


そのドームには式馬の他にも誰かいる。


背は小さく、緑色の肌をした怪物——ゴブリンだ。


「おいおい、ゲームみたいだな……どうしたんだこの世界はよぉ」


「ギギギッ!」


ゴブリンは錆びついた声を上げて棍棒を振り下ろした。式馬はとっさに腕でガードする。


防げるはずだった。だがゴブリンは細い腕に見合わない剛力で、式馬の腕ごと頭をかち割った。


「がっ……!!!」


式馬は死んだ。






「はっ!?」


式馬は自分の腕と頭を確認する。どっちも無事だ。腕はひしゃげていないし、頭も頭蓋骨が正常に守ってくれている。


夢にしてはリアルすぎる。目の前にゴブリンがいるのも変わらない。ドームに連れてこられたばかりの状況とそっくりだ。


「リセットされた……?」


式馬は「メニュー」と叫んだ。


——————————

*お知らせ

 ステータス


『テスト情報』

『アップデート情報』

『アップデート情報』‥‥‥

——————————


タブに『ステータス』が追加されている。


そしてお知らせにあった『テスター募集』は消滅しており、『テスト情報』が新しく追加されていた。


「これがテストってことか?」


テスターなんかに参加するんじゃなかったと式馬は悪態吐く。


式馬は棍棒を振りかぶって襲ってくるゴブリンから逃げながら、お知らせの『テスト情報』を開いた。


——————————

*テスト情報


モンスター

ステータス

をテストする


——————————


「ゴブリンがモンスターってことか!? ならステータスは……」


タブを『ステータス』に切り替える。ゲームで見慣れたステータス画面が現れた。


——————————

 お知らせ

*ステータス


レベル0

力強さ:0

体力:0

賢さ:0

精神:0

素早さ:0

幸運:0

SP:0

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「全部ゼロかよ……なにが何だかわからんが、レベリングしろってことか?」


レベル制ステータスとモンスターが揃えば、することはひとつ。目の前のモンスターを倒すのだ。


ゴブリンに殺されてもリセットされる。そしてステータスに残機のような表示がないことから、式馬は何度でも死に戻りできるタイプだと判断した。


「やってやるよ」


モンスターとステータスのテストなら、そのどちらか、あるいは両方をこなせばここから脱出できるはずだ。


永遠に閉じ込められる嫌な想像は振り払う。


これはゲームだ。そう自分に言い聞かせ、式馬はゴブリンに向き直った。

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