世界がアップデートされたのでテスターになります

第1話

『世界はアップデートされました』


「うるさっ!!」


ゲーム中の式馬はびっくりしてイヤホンを外した。


馬鹿みたいなボリュームだ。大きすぎて響いたような気さえする。


「アプデのアナウンスをボイス付きにすんじゃねえよ。どこに力入れてんだよ……」


好きなRPGの新作が出たからウキウキで遊んでいたのに、唐突にクソデカアナウンスがあれば萎える。


そもそも遊んでいる途中でアプデが入るようなゲームじゃないので、不思議に思いながら音量を下げようとメニューを開いた。


「ええっと、メニューは……え?」


ブンと目の前にウィンドウが現れる。ゲーム画面にではなく、ホログラムのように空中に浮かんでいた。


一昔前のRPGのようなドット絵のメニューには『お知らせ』と書かれたタブがあり、お知らせのタイトルがずらりと並んでいる。


——————————

*お知らせ


『アップデート情報』

『テスター募集』

『アップデート情報』……

——————————


ゲームの画面がそのままリアルに飛び出したかのようだ。


式馬のやっているRPGにホログラムの機能があるわけではない。一般的な家庭用ゲーム機だ。


脳内に直接聞こえた『世界はアップデートしました』の声は、これのことを言っているのだろうか。超常現象に戸惑いながらも、式馬はそんなふうに思った。


「……押せるのか?」


式馬は一番上の『アップデート情報』を押す——前に『テスター募集』をタッチした。


『アップデート情報』はお知らせに何個もあったが『テスター募集』はひとつしか見当たらない。他にも『イベント開催』などもあったが、式馬の興味を引いたのはこれだった。


——————————

*テスター募集


1/7人

『参加』

——————————


「情報少なすぎんだろ」


何のテストなのかもわからない。ここから読み取れるのは1/7人が何かしらの人数表記であることと、『参加』を押すだけで参加できることだけだ。


1/7人が2/7人に変化した。


リアルタイムで参加人数を表示している。そしてこのテストは7人しか参加できない。数字が3、4と増えていく。


「参加していいのか……? クソ、考える暇がねえ!」


そう言いながら、式馬の指は『参加』のボタンを押していた。表示されているのはちょうど7/7人。ギリギリだった。


脳内に直接、声が聞こえた。


『テストを開始します』


「いきなりかよ!!」


式馬は真っ暗な球体に飲み込まれ、この世界から姿を消した。

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