第13話 ゲーム
ホラー映画も終わり今はカフェでお茶をしている。
「面白かったね映画」
そんな言葉に僕は頷きを返す。
「まさかのコメディ系とはね」
ホラー映画とは書いてあったが、見てみると確かに殺人鬼は出ているが音とかはコメディよりで怖い感じではなかった。
「ある意味裏切られた感もあったけど内容は中々だったね」
「でも残念だったね」
「なんで」
「ホラー系だったら私が怖がって抱き着く可能性もあったのに」
「バカかよ」
僕は目の前にあるカフェオレを混ぜながら気持ちを整理していく。
「で次はどうするの」
「う~んそうだね~」
彼女はストローでジュースを飲みながら唸っている。
「君が行きたいところとかないの」
「僕のか。う~んゲーセン」
「ゲーセンかあ」
自分の行くところのなさに嘆くところはあるがどうだろう。
「いいね。ゲーセンじゃあ行こう」
思ったら即行動は彼女の良いところではあるが、何分カフェオレは熱いのを頼んだため少し待ってもらい向かった。
☆☆☆☆
ゲームセンターについて思う事は懐かしいなという気分である。
「全然お客さんいないね」
彼女は来て早々中々失礼な事を言っている。
まあ僕も常々思って入るが。
「まあ僕も最近来てなかったけど前来た時もお客さんはいなかったから通常運行ではあるかな」
「いや君の方が失礼な事言ってない」
まあ、そうは思うが事実だな。
「ねえこれ取ろうよ」
そこには大きいピンクのクマのぬいぐるみが入っていた。
「いいんじゃない」
僕は彼女がお金を入れるのを見ながらクレーンが動くのを見る。
「ねぇ横から見てストップっていてよ」
彼女に言われるがままに僕は横に立ってみる。
頃合いの良いところでストップって言ってクレーンは動きを止めるがあまり動かない。
「う~んやっぱり難しいね。君もやってよ」
彼女に促され僕が挑戦することになった。
このクレーンゲームは二本の柱に横に寝そべったぬいぐるみを取るタイプだが、基本的にこの二本の柱に乗せられた物は横にして落とすのがセオリーになっている。
それを念頭に入れ、500円で6回分に突っ込む。
さっき見てアームの速さアームの腕の力は見たので、腕にはかなり力が強い当たり台と言えた。
アームの腕で重たい頭の方を狙って横にしていく。
四手目でなんとか横になってくれたので、そこからはアームの先で押していく。
足を先に押し、プランプラン状態になったところで、もう百円でもう一押しをしてぬいぐるみを落とした。
「はい、どうぞ」
下から取ったピンクのクマのぬいぐるみを渡す。
「ありがとうすごいね君」
むぎゅーとぬいぐるみを抱きしめている。
「それにしても簡単に取れたけどやってたの」
「いや、ちょっと前に知り合いのとこでゲーセンのバイトしてたからやり慣れてただけ。後は運がよかったかな」
「えっバイトしてたの」
「何か問題あんのかよ」
「いや、対人関係問題ありで接客なんてできないと思って」
僕をどんな奴だと思ってんだよ。まあ、もともとこの客の少なさだから接客ていう接客は特になかったがな。
「じゃあ、こういうの取れるの」
彼女が射したのは一番新しく入れられているであろうフィギュア。
「いや、無理だな」
「なんで?」
「取ろうと思ったらかなりお金を取られるよこれは、もちろんうまい人ならそんなこともないんだろうけど」
「だから何で」
「多分このフィギュアは入ってまだそんなに立ってないから激ムズ設定にされてると思う」
「じゃあ基本取れないようにできてるってこと」
「ああ、でもまあある程度やって定員さんを呼んで補助してもらうのが理想的かな」
「それだったら簡単に取れるの」
「簡単ではないけどまあある程度出費は抑えられるかな」
「でもやった回数とかはやっぱわかっちゃうの」
「ああ、わかるようになってるから嘘なんてついたらすぐにわかるよ」
「そうなんだ」
彼女はフィギュア自体には興味なかったのかもう別の所に行った。
「それにしてもすごいねあんな7回で手に入れて」
「でしょ」
原価がある程度わかるからそんなにお金を使いたくないから数発で決めてると言ったら、引かれるのはさすがの僕にもわかるので言わなかった。
その後は定番のカーとゲームやエアホッケーをやった後珍しい射的ゲームがあったのでこれに挑戦することにした。
「クレー射撃ってこんなのあったのか」
クレー射撃なんてマイナーなゲームを置くここは変なところだな。
「ねえ、どうせならこれで今日のご飯どっちが払うか勝負しようよ」
にひりと笑いながら彼女は告げる。
「こんなマイナーな奴じゃなくても今までも結構色々あっただろ」
「いやどっちも慣れてない物の方がいいでしょ」
まあ、確かに彼女はいよーにカートゲーがうまかったが。
「まあいいよ。負ける気がしないから」
「何おー私だってかなりやるんだからね」
このゲームはどうやら交互に撃って飛んでくる皿を割るみたいだ。
「じゃあプロでいいよな」
プロと初心者だと飛んでくる皿が増えたり角度が変わったりするようだ。
「もちろんプロで」
「じゃあ僕から」
僕は画像にある持ち方を真似てちゃんと肩に銃身を当て構える。
そこから出てきた皿を綺麗に割る。
「じゃあ次は君ね」
彼女に銃を渡す。
「うっ結構重いねこれ」
重さに慣れてないためぶれて当たらなかった。
「悪いけどこのまま離すからね」
僕は大人げないと言われようが、勝負では女性とか関係ないからね。
「また、ヒット」
そのまま差を広げ最後の局面でまあ当てても意味がないものにはなったが彼女の番が来た。
「最後に当てたいから手伝ってよ」
「手伝うの」
変に意識したくなかったためささっとやるために、彼女の後ろに回り込み後ろから支える。
「ちゃんと画面に集中して、銃身に顔を傾けて来たよ」
すぐに発射された二枚の皿僕は二枚のうち一枚に絞り僕が無理やり銃身を移動し短く弾けといい発射された球は一枚綺麗に割った。
「やった割れたー」
そう言って僕に抱き着いてくる彼女。
僕は抱き返すこともできずそして離れることもできなかった。
僕に抱きしめていたことに気づいた彼女はすぐに離れた。彼女にも恥ずかしいという感情があったのは少し驚きである。
「ごめんねいきなり抱き着いたりして嬉しくて」
そう一言言ってなんともいえない空気がこの場に流れる。
今この場に他の人がいなくてよかったよ。後監視カメラでバイトが見てないことを祈っておく。
「それにしてもいきなり後ろから抱き着いてきて驚いたんだからね」
何とか調子を取り戻そうと話しているがまだ顔が赤い。
「教えてていうから」
「いや、言葉とかもあったのにすぐに体に覚えさせようとするなんて」
「なんかちょっとエロい感じで言うなよ」
本当に何で口で言わなかったのかは謎だな。
「まあいいよそれよりご飯はおごってくれるんだろ」
「えー私の体触ったんだからむしろ借金でしょ」
どんなあたりやみたいな暴論だ。
「まあいいよ飯は」
「やった。じゃあご飯行く前に最後にあれやって行こうか」
それは懐かしのプリントカメラであった。
「これやるのも久々だなー」
彼女は久々だろうが僕はこれに入ったのは初めてである。
「ほら始まるからほら近づいて」
さっき抱き着いて赤面してたくせに自分からなら大丈夫のようだ。
彼女とぬいぐるみと僕とでスリーショットを決め、落書きはすべて彼女任せた。
「じゃあこれね」
今はデータとシールが出るようになっているようで、データを僕はもらった。
そのデータの中には、不器用に笑っている僕とぬいぐるみを抱きしめながら幸せそうな彼女がいた。
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