第12話 デート?

 今僕は人を待っている。


 こんな人が良く通る駅の入り口近くで待っている。


 スマホをいじりながら時間を潰しているがスマホの時計を見ると待ち合わせ時間はちょいすぎてしまっている。


 なんでこんな所で僕が人を待っているのかというと数日前に遡る。




「ねえ、次の土曜日空いてる」


 いきなり帰り道に彼女にそう声をかけられた。


「なんで」


 僕にしてはかなり素っ頓狂な声が出たと思う。


「何でって酷いなあ別に取って食おうってわけじゃないんだよ。 ただ予定あるのかなって」


「バンドの練習をしないなら何もないな」


 今考えると最近の予定はバンド練習で埋め尽くされているのかなんだか自然過ぎて気にしてなかったな。


「OKなら今週の土曜は休みにするから予定は空いてるね」


「おい、休みってもうすぐコンテストもあって今は根を詰めるときじゃないのかよ」


「まあそうなんだけどね」


 僕の反論に少し俯いた彼女は程なくして顔を上げる。


「でもでも君があ休みは大事だっていてたじゃない、だからだから休息にしてもいっかな~って」


 急にすごくうざい喋り方をする彼女を僕はどうすればいいのかわからずに見ていた。


「もう黙らないでよ。でどうするの休みは確定だから行くね。OKバイバイ」


 有無を言わせず彼女はそういって去っていく。


 そんな事があり、僕は今こうやって人が行きかうこの駅で彼女を待っていた。


「遅いな。もしかしてからかわれたか」


 ネガティブシンキングの僕はすぐにそういう風な事を思ってしまう。


 待ち合わせの時間から10分は過ぎている。


「メールは送っているが既読がついていない」


 まあ、未読スルーの可能性も捨てきれないがそんなことをして何になるのかが全くわからない。


 メールをまた確認して改めて待ち合わせ場所と時間を見る。


「9時半の駅前で集合だよな」


 しっかり合っているのを確認して時計を見る。


 9時40分。そうスマホの時計には刻まれている。


「本当に待ち合わせ場所を間違えたのか」


 でもそれだとメールを見て何か返してくるだろう。


「後20分待ってこなかったら帰るか」


 そう思った時にあちらから走ってくる人影が見えた。


 女の子は走りやすそうな運動靴と短いズボン上はパーカーを着ている。


「ごめん遅れて」


 彼女は肩で息をしているそれにともない汗が流れている。


 それを見るだけで彼女が走ってここまで来たことがわかるため、特に言う気も少し失せってしまった。


 僕はバックからハンカチを出し、彼女に渡す。


 それを見て彼女は少し驚いた顔をしながらハンカチを受け取り顔の汗を拭く。


「もしかして私の汗の匂いを嗅ごうとハンカチを」


「何でだよ!ただの気遣いだろうが」


 全く人の善意を何だと思っているのだか。


「ごめんごめん冗談だって。 はい、ありがとね」


 彼女は僕にハンカチを返してくる。


「いいよそれ上げるよ」


 あんなこと言われて逆に返してもらったらどうすればいいかわからないために上げることにした。


「そっかありがとね」


 ハンカチを口元に持ってきて彼女は笑いながらお礼を言った。


「じゃあ行こっか」


 そういって手を出してくる彼女。


「何、これは」


「迷子にならないように手を繋いでもらおうと思ってさ」


「アホか」


 僕はそう言って駅の方に入っていく。


「あっ待ってよ~」


 彼女はそれを追って走る。




☆☆☆☆




 電車に乗り揺られながら来た先は映画館であった。


「何見る」


「何が見たくて来たの」


「いや特に何も考えてないね何か良いのやってればなぁって」


 とりあえず僕らは公開している一覧の前に行きどれを見るのかの相談を始める。


「ラブコメやホラーにアクション系とアニメどれにする」


「う~んどれにしようか」


「何でもいいよ、完全に今日はそっちがさっそたことだしさ」


「じゃあ全部見る?」


 全部と思い顔を見るとマジぽい。


「全部は流石に長くない。まあいいけど」


「う~んまあ確かにさすがにずっと映画館っていうのも味気ないか」


 悩んだ結果ホラー系を見ることになった。


「ホラーとか普通に大丈夫な方なの」


 彼女は普通に選んだところから見て大丈夫だろうとは思ったが一応聞いてみる。


「いや苦手だよ。でもまあ苦手でも見れない訳じゃないから大丈夫」


「苦手なのに何で選ぶのか、もっと楽しめる作品合ったでしょ」


「別にいいのそれに今日は君が隣にいるからねおもっきり抱き着いた上げるよ。役得だね」


 それは役得かもしれないが急に来られたら普通に怖いかもしれないから遠慮したいものである。


 そんな僕の気持ちを知らず、映画は始まっていく。


 とりあえず叫ばないようにはしたいな。

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