第5話 彼女の笑みはなんだか不思議

 朝学校に来て予想通りといえば予想通りである。


「朝の挨拶はまだ許せるがなんで昼時まで来た」


 そう目の前にはお弁当を広げている女性が二人いる。


「えーいいじゃんこんな可愛らしい乙女二人が一緒にご飯食べてくれるなんて青春してるって感じがしてー」


「そうそう人が多い方がご飯もおいしいですしね」


 智のその同調にはイラっと来るがまあ間違いではないのは確かである。


「私はあんたが凛音に変なことしないように見張りで来ただけだから」


 その為だけって絶対他に食う人いないだけだろ。まあこれは完全に偏見であるが。


「まあとりあえずほら食べよ食べよ私お腹すきすぎてもう倒れそうなんだよね」


 そう言いながらゆっくり口に運んでいく。


 僕はため息をつきながら食事を始める。


 他愛無い会話を食事続けているとふと聞こえてきた。


 なんでアイツなんかと飯食ってんだ、そんな言葉である。いや、マジお前たちがいて助かると思う己惚れずに済んでるんだからな。


 第一こんなことになるのは、昨日のシュミレーションでばっちりで後のアイツらの質問の答えも考えてきている。


「何黙ってんのよ。気持ち悪い」


「いや、笑みがきもいとかならまだしも黙ってきもいってどうすればいいんだよ」


「ここからいなくなれば」


「来てるのそっちでまさかのだな」


 無茶苦茶な奴であるまったく。


 そんな僕たちのやり取りを二人は笑ってみている。


 笑うなとちょっとむくれて言ってしまう。


「わりいわりい、それにしても仲いいなあお前ら」


「良くないからあんたも勝手な憶測でものをいうのやめてくれる」


 間髪入れずに否定する。こいつは相当だなと智は漏らしている。


「まあまあ夏、かわいい顔が台無しだから怒んないの」


 この子は本当に彼女の言うことだけは素直に聞くな。何か弱みでも握られてるのか。


 その後は食事も終わったので自分のクラスに戻っていく、途中にまた放課後ねと言い残し出ていく。


「で、どういうことなんだ」


 その後の事は言うまでもなく質問攻めである。


 まあ、この想定された状況である訳なので僕とスイーツバイキングであって仲良くなったという。そんな内容で乗り切れている。


 これで変な噂は出ないであろう。あってもちょっと男でスイーツバイキングにいったやばい奴ぐらいで終われる。


 僕が甘いもの好きということをクラスの人は知っているのであるかなって思ってくれたみたいである。


 智にはお近づきになれてよかったなの一言でナイスと言って納得してくれた。こういうところはいい奴である。






☆☆☆☆






 放課後に来るとは思ったが、まさかスイーツ食べに行こうという内容で来て、情報早くないと思ってしまう。


 智には予約制だからと言って断る徹底ぶりである。


「別に一緒に帰らなくてもよくなかったか」


 そう別に一緒に帰る必要はないのである。今現在は楽器なんて持ってないのでこのまま直行はできないのである。


「いやー君がスイーツ友達なんて噂を広げてくれるからつれだしやすくなっちゃったよ~」


「いや、そんな広めたつもりはなかったんだけどな」


「う~んこれでいつでも私を連れ出していいんだよ。男の中じゃあ君だけなんだからもっと喜んでよ」


 スイーツ好きってだけで連れまわせる君はお手軽すぎだろと思いながら心のうちにしまう。


「第一君だけなんだな来たのは」


 そう来るとしたらあの子も一緒だと思っていたけど、彼女の隣を歩いてるのは僕だけである。


「もう彼女といるのに他の女の話嫌われるよ」


「誰が彼女だ、どう考えてもそこらにいる同級生しかいないだろ」


「もうひどいなあ、それとも両手に花のほうがよかった」


「それこそ学校でまた違う噂が流れそうだよ」


 そうなったらまた嘘をつかないといけない、嘘はつきすぎると何が真実かわからなくなるから極力抑えたいのである。


「なら当分は私で我慢しなよ。もし彼女がいるなら自嘲した上げるけど」


 それを笑いながら言っているあたりわかりきっているのだろう。


「いないよそんなのそれより今はバンドだろ。一番取って僕を楽させてよ」


「もちろん!当たり前だよ。今のメンバーなら最速で駆け上がれるよ」


 僕は君がいれば本当に最速で駆け抜けていきそうでそれが当然だと思えてしまう。


「でもまずは練習の前にスイーツを買いに行こう!君のせいでとてつもなくスイーツを食べたくなっちゃったんだから」


 そんなこと言って駆けていく。その背中はどんどん遠くなっていくように、だけど止まってこっちを振り返ってこう言うんだ。


「思ったが期日って奴だよ。私は思ったらどんな事でもやるんだからほらちゃんと付いてきてよ。私のベース君!・・・・・・・・・・・・ね」


 何か最後のほうは聞こえなかったがそれでも僕が彼女の隣を歩くことを望んでいるならこの黄金の橋を渡らないわけにはいかないのである。


「ちゃんと付いていくよ僕は楽をしたいからね」


 彼はそんな照れ隠しをいいながら歩み寄ってくる。

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