第二話

「ええっ!? ゆ、誘拐?!」

アルドたち全員がほぼ同時に驚きの声をあげた。ウィリーはまさに顔面蒼白といった感じで、目に涙を浮かべ、下を向いている。

「EGPDには連絡したの?!」

エイミが目をまんまるにして、強めの口調で言った。続いて、セティーも身を乗り出し、

「そうだぞ。誘拐なんて、立派な犯罪だ。こういうときのためにあるんだぞ、司法機関たるものは。」

と思わず、声を大きくした。

ウィリーは大粒の涙を流し、泣きながらかぶりを振った。

「だ、駄目ですよぉ。連絡なんかしたりしたら、彼女が殺されます。・・・・それに、・・・・」

彼はそこで、言葉にならなくなり、泣き出した。

「泣いていてはわからぬでござるよ。我々も可能な限り、協力するから、話すでござるよ。」

サイラスがまばたきをしながら、優しく言った。

「そうよ、私たちも助けてあげるから、話して?・・・・ね?お兄ちゃん?」

フィーネがそう言って、顔をアルドのほうへ向けた。

「ああ。できる限り、協力するよ。さあ、話して。」

アルドが話の続きを促した。

「は、はい。ごめんなさい。・・・・ぐすっ。」

ウィリーはようやく泣くのをやめ、涙を袖口で拭った。そして、話を続けた。

「彼女、ジュリアという同い年の女の子なんですが、昨日夜、一緒に住んでいる妹さんからメールが来まして。それで、わかったんです。」

「メール?」

アルドは目をぱちくりさせた。それを見たリィカは、

「メールトハ、一瞬ニシテ相手ニ送レル便利なモノデス。」

と教えた。ウィリーもポケットからなにやら長方形の板状の機械?を取りだし、指でさすり、

「これです。これはスマートフォンというんですが、これが彼女をさらった奴らが送ってきた文です。彼女の妹さんに転送してもらいました。」

と、みんなに見せた。それは、こんな文章だった。


お前の姉は俺らが預かった。返して欲しければ、3日以内に工業都市廃墟へ来い。身代金3億gilを用意しろ。EGPDに連絡したら、姉の命は無きものと思え。

龍神会

「えっ?!龍神会?!」

エイミが怖いものを見たかのような表情をし、思わず声が裏返った。

「知ってるのか?」

アルドが尋ねる。エイミは目を丸くして、声を震わせ、

「知ってるもなにも。ここ、曙光都市エルジオンで知らない人はいないといわれる半グレ集団よ。殺人、強盗までなんでもやるという恐怖の集団よ。」

と、答えた。ザオルも補足する。

「工業都市廃墟に来い、ってことは、奴ら、サーチビットとか、人造人間を手駒に使ってくるだろうな。‥……‥……並の人間には太刀打ちできないかもしれない。」

その口調からは、冗談さが読み取れない。

「そ、そんなあ。彼女が殺されたら・・・・。」

ウィリーは悲壮感をあらわにする。

「だから、武器を見ていたのでござるか?」

サイラスが聞く。

「はい。強い武器を装備して、あいつらを倒し、彼女をこの手で助け出したいんです!」

ウィリーは、言葉に力を込め、言った。

「彼女とはどういう仲なの?できれば、話してくれるかな?」

セティーが脇から口を挟んだ。目の前のアルドやエイミも頷く。

「はい。彼女は、私が働いている書店の常連客です。最初はただのお客さんだから、と、それ以上の感情は持たないようにしていたんです。けど、接していくにつれ、想いが強くなり、思いきって告白しようと思いました。そしたら、・・・・。」

ウィリーがここで一旦言葉を切ったところで、エイミが口を挟んだ。

「彼女がさらわれた?」

「はい。そうです。だから、もし万が一のことがあったら、後悔しそうで。」

ウィリーは悲しげな表情を見せ、言った。

「よしっ!俺らが援護する。奴ら、龍神会は俺らが片付ける。その隙に、君が彼女を助け出すんだ。」

アルドが握りこぶしを握りしめ、力強く言った。エイミも、サイラスも、フィーネも、リィカも、セティーもみんな、力強く頷いた。ウィリーは感激の余り、アルドたちの顔を一人一人見回し、お礼を言った。

「ありがとうございます。このご恩は生涯、忘れません。」

「俺も助けたいひとがいるから、他人事とは思えないんだ。」

アルドはぼそりと言った。

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