エルジオン恋物語

茨城王子

第一話

「あー、面白かったー!バトルオブミグランスは最高だわ。ねえ?アルド?」

ここは、曙光都市エルジオン、シータ区画にあるとあるカフェ。見るからに腕っぷしが強そうな黒髪の少女が、お茶を片手に、赤いマントを身に纏い大きな両刃剣を腰に提げた少年に話している。

「うん、確かに面白かったよね、エイミはああいうのが好きだね。‥……このお茶も上手い!」

「アルド。バトルオブミグランスは、コウギョウシュウニュウ ハ 200億gilを越えていマス。」

「え?マジで?! 今年最大のヒット作じゃない?!」

エイミが目を丸くして、目の前に座っているピンク色のボディをしたアンドロイドに向けて、声をあげた。

「そ、そうなのか?よ、よくわかんないけど、凄いことなんだな。」

両刃剣を腰に提げた少年、アルドは驚いて、相づちを打った。

「タシカニ、今年最大ノ ヒットサクヒンになるデショウ」

ピンクのボディをしたアンドロイド、リィカが言った。



ーーーガンマ区画 イシャール堂ーーー

アルドたちは、別行動をしていたフィーネ、サイラス、セティーとイシャール堂前で合流した。

「お兄ちゃん、楽しかった?」

銀色の長い髪をした色白のかわいらしい少女がアルドに、声をかけた。

「ああ。楽しかったぞ。フィーネたちはどこに行ったんだ?」

「IDAシティのインターネットカフェというところでね、ゲームをしてたの。」

「そしたら、偶然、そこでセティー殿に会いましてな、一緒に来ましたぞ。」

カエルの姿をした剣士(非常にゴツい鎧、東方では武士とかいうものが着るものらしい)がそう言うと、後ろに立っていた男を紹介した。

「やあ、アルド君。久しぶり。」

男はそう言って、お辞儀をした。彼は、金髪をしたいわゆるイケメンで、小綺麗な灰色の立派なスーツを着ている。背中には槍を装備し、彼のそばでは、球形をした黒いのと白いのが宙に浮いている。

「やあ、セティー。久しぶり。今日は非番?」

アルドはにこりとして、手を軽くあげ、答えた。

「本日ハ、平和デス。」

黒い球形の機械?ロボット?が宙に浮きながら電子音声で答えた。

「ああ、そうさ。‥……ただ、この槍の切れ味が悪くなってさ、ここの親父さんに見てもらいに来たんだ。」

セティーは背中から槍を外し、天高く 掲げた。

「うちのお父さんの鍛冶屋の腕は確かだもん。‥……さ、行こ」

エイミに背中を押されるかたちで、アルドたちは店に入っていった。


ーーーーイシャール堂 店内ーー

イシャール堂は、曙光都市エルジオン最大の武器屋兼工房である。古今東西、いかなる武器であっても、店主ザオルの手にかかれば朝飯前なのだ。店の中はだいたい、表が販売エリア、奥が工房になっている。

「おー、お帰り!いま、ちょうど手が空いたところだ。」

店主ザオルが、店に入ってきたアルドたちの中に娘エイミを見つけると元気に声をかけた。彼、ザオルはいつも暑い工房で働いているためか、上半身裸だ。筋肉隆々のいい体つきをしている。白い顎髭がより男前を際立たせている。

「すみません。ザオルさん。この槍がなまくらになってしまいまして、研いでいただけませんか?」

セティーが一歩前に進み出て、槍を両手で持ち替えて差し出した。

「いいですよ。見てみましょう。‥……時間潰しにウチの自慢の武器でも見ていったら?」

ザオルは丁寧に槍を受け取り、奥の工房へ消えていった。

アルドたちはイシャール堂の中を見て廻った。店自体はそれほど広くなく、30分もあれば一回りできるくらいだ。さすがにエルジオン随一の武器商人といわれるだけのことはある。古今東西、様々な鎧、剣、盾、兜、ネックレス、ブレスレット等々。

アルドはふと、店の左奥に展示してある洋刀の前に立つ1人の少年に目が留まった。年恰好はだいたいアルドと同い年、黒く、いわゆる坊っちゃん刈りという感じの短髪、顔は多少実年齢より幼く見える。華奢な感じで肉体労働向きでない感じだ。大きく丸い眼鏡をかけ、本をよく読みそうな感じにも見える。服装は、薄い青色の長袖シャツの上に緑色のチョッキを纏い、えんじ色の厚手のズボン、茶色の靴を履いている。見た感じ、中流家庭の出のようにも見える。

彼は、何かを心配しているような、何かを不安がっているような物憂げな表情をしている。アルドは気になり、近寄った。


アルド、フィーネ、エイミ、サイラス、セティー、リィカは少年と共に、店の隅に置かれた丸テーブルを囲んで椅子に腰かけている。

「・・・ぼ、僕は、ウィリー.マクスウェルといいます。シータ区画のエルジオンサイバーブックセンターという書店で働いています。なにか、いい武器がないかと思い、来ました。」

「どうして、武器が欲しいの?」

「想い人の女の子が誘拐されたんです。」

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