第4話 雪待ちの人

 役目を終えたロボットは走り続けた。海が見える吹きっさらしの冬の冷たい風が吹いている。そんな寒くて冷たい丘で倒れた。深夜だったので景色は黒一色だ。


 そのまま何時間、少しも動かない。ロボットは雪が降るのを待っていた。正確にいうと雨が雪に変わるほどの気温の変化を待っていた。



 ロボットが流行ったのは少し昔のことだ。イケメン好きの女性研究者○○がロボットを発明した。家庭の中で家事や仕事の手伝いをする、男手が欲しいおばあちゃんに愛用され長く広く普及した。○○印は女性の味方とキャッチコピーがつくほどに、優しさと頼りがいのあるロボットが売りだった。


 それから戦争や貧困の時代を経てロボットを持てる家庭はなくなった。戦争から復興し、空き家の一斉解体が始まった。つぶれた家屋の片付けをしていた行き場をないロボットたちを処分場へ連れていった。今後のために再利用するのだ。他社のロボットは改造され武器化していたが、○○印は町で人を守っていた。武器化信号を拒否したのだ。ほとんどが爆撃で壊れた。それでも死ねないロボットが燃やされまた金属になる。今度は拒否しなかった。とある一体を除いて。



「廃棄物処理場から一体の家庭用ロボットが脱走しました。彼は暴走しています!人型の成人男性、長身で顔はイケメンとのことです!○○印の製品です、安全性が最も優れているはずなんですが。警察が追っていますが、現在行方不明です。見かけた方は連絡を!」

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