錯覚
「う~~~~~~」
あれは、いったい何だったのか。今日は早い時間に仕事が終わった。だからさっさと部屋に戻ったらロンもいたから一緒にお昼ごはんを食べた。それから少し買い物に出て市場で私の好きな果物と、ロンの好きな果物の入った飲み物が安く売っていたから食後の甘味に、と買って帰った。
そうしたらロンが私のオルゴールを床に叩きつけようとしていた。あまりのことに気が動転してワーワー騒ぐだけ騒いで飛び出してきてしまった。そうせざるを得ないほどに混乱してしまったのだ。
私はロンと、ヴェロニクと家族になりつつあるあと思っていた。本当の家族になれるんじゃないかと。でも気のせいだったのだろうか。ロンには全然そんなつもりはなかったのかもしれない。そう考えてしまうといきなり悲しくなってきて涙が出そうだ。
しかし王宮内を泣きながら歩くというのも目立ってしょうがない。どこか落ち着ける場所はなかろうか。今部屋に帰るのは嫌だった。ここでロンに拒絶されたら心がもうダメだ。
それにロンの言い分も聞かずに騒ぐだけ騒いでしまったことに罪悪感もある。彼女は気に入らないからと物を叩きつけて壊すような娘だろうか。違う。ロンはそんな子じゃない。なのに私は一時の感情で彼女を悪者にしてしまった。その罪悪感は生半可なものではなく。
「はー……」
とてもじゃないけど今すぐに戻ることはできない。かといって他に行く当てもない。塔に行けばガスパルがいるだろうけど、今のこの状況を彼に説明するのもなあ。でも他に行くところもないし。
仕方なしに塔の方へとぼとぼ歩いていると聞きなれた声が後ろから私を呼び止めた。
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